編集後記


2012年07月07日(土) [長年日記]

16階観測室公開(明石市立天文科学館)

いまは梅雨、このところ雨が続いています。特に昨夜は強い雨と風でした。

今日は夕方には天文科学館で七夕講演会があり、その後半に観望会もやるのですが、講演会はともかく観望会は開催できるのか危ぶんでいました。

朝、風はおさまり、少し日も差してきました。これは期待できそうです。まず、お昼間の16階観測室公開に臨みます。今日は私はこちらの当番。

準備を済ませ、観測室に登る階段の入口を開けた途端、一気にどやどやどやとお客さんが入って来ました。あっという間に室内はいっぱいになります。

ところが空は、雲しか見えない状態に。まとまった人数が集まったので、望遠鏡の説明をひと通り。

最初の15分で56人。これは記録だ。

その後はいつもどおりのペースに戻りましたが、全体で200人はきましたか。

終盤頃に一瞬雲が切れ、澄み切った空にくっきりと三日月状の金星が見えました。この時またお客さんが大量に上がってきたのですが、金星が見られたのはほんの数人で、すぐに雲に覆われてしまいました。お客さんの間から「あぁ~(><)」という大きなため息が…。晴れ間が見えたので期待して登ってこられたお客さんもおられたのですが、こればかりはどうにもなりません。

七夕講演会「金環日食限界線はどこに?」

明石市立天文科学館で、七夕講演会「金環日食限界線はどこに?」が開催されました。講師は国立天文台の相馬充助教。金環日食限界線プロジェクトでお世話になっています。

講演は日食の起こる仕組みを丁寧に説明されるところからはじまりました。楕円軌道の説明など少し骨のある内容でしたが、聞き応えがありました。

相馬先生が計算された金環日食限界線は「相馬ー早水ライン」として知られていますが、限界線を検討するにあたって、最後に残った不明点は太陽半径でした。

よく知られているように、国際天文学連合が採用する太陽半径は696,000kmで、1891年に観測して求められた値によっています。「以後測定されたことがない」なんて説明がなされることもありますが、[PDF]相馬先生の論文によれば、それ以降も何度かにわたって測定が試みられています。日食を使った解析はこれまでも行われた手法です。ところが、それらで求められた値はかなりばらつきが大きいのです。観測誤差や、そもそも太陽半径は常に変化しないのか*1という疑問や。

ともかく、相馬-早水ラインは太陽半径696,000kmで計算されています。半径が100km大きいと、日本付近の限界線は限界線に垂直な方向に北やや西よりに300mずれます。

限界線研究会では、金環日食時のベイリービーズの明滅を観測することで太陽半径の測定を試みました。今回の講演で新しい半径の値が公表されました。まだ暫定値ながら±10kmとさらに精度が上がっています。ベイリービーズ観測については、太陽縁の減光や各観測者の条件の違いなどで解析値がばらつくことが予想されましたが、ところが実際にはばらつきが非常に少ないということが特筆されます。

後半は天文科学館井上さんによる、日食メガネの限界線についての報告。解析については、限界線から各報告地点への距離(今回は経度差を採用)ごとに、リンクになったという報告の数を集計し、グラフにしたとのこと。これも距離によるばらつきは比較的低く、相馬ー早水ラインで、リングに見えた割合がきれいに逆転します。

井上さんの現時点での解析は標高補正は入っていなかったと思いますが、報告データには標高値も入っており、最終的には標高を考慮した結果が出されるはずです。

*1 過去の日食の記録から、太陽半径が変化しているのではとおもわれる事例もあり

観望会

講演会の後、4階日時計広場と玄関前に望遠鏡を出して観望会が開催されました。

見事に晴れまして、木星、火星などいくつもの天体を見ることが出来ました。今日のスタッフに、2月以降、観望で曇られたことがない自称「巨大てるてる坊主」がおられまして。この方には足を向けて寝られません。


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