(7/26投稿)
北硫黄島の東海上、北緯25度18分、東経142度01分。11時25分~32分頃(位置および時刻はふくださんより)、ふじ丸船上にて。(7/27作成)
前後しますが、当日の様子を。
航海2日目の夜から雲が切れはじめました。当日は朝からとても素晴らしい晴れ空。
北硫黄島です。ついに到着しました。噴煙が上がっているように見えますが、たまたま雲が重なって見えているだけです。
日の出の時刻を寝過ごし、外に出てみると、「グリーンフラッシュを見た!」と興奮して話している人に遭遇。しまった・・・・
船首付近にはカツオドリが群れをなしていました。船に追い立てられてトビウオが海面から飛び上がってくるのを狙っているのです。
トビウオが飛ぶところ、初めて見ました。写真には撮れず。
風もなく、波もとても静か。べた凪です。話では、この時期の小笠原沖はべた凪が多いとか。絶好の観測日和です。期待が高まります。
本土を離れて初めて、2隻の船が視界に入りました。
「ぱしふぃっくびいなす」。船尾方向に見えました。21日の午後ぐらいから後方にいて、夜になってから「ふじ丸」を追い抜いて行きました。いつの間にかまた後方に下がっています。
「ぱしふぃっくびいなす」は本当はトカラ方面へ向かう予定だったのが、天候を見て急きょ北硫黄島方面へ進路を変更したとのこと。
おそらく「おがさわら丸」。右舷前方にいました。
このほか、食が始まるころに、もう2隻が姿を表します。ふじ丸を含めて合計5隻が、北硫黄島近海に集結したことになります。
また、ずっと北の、母島の南海上、ぎりぎり皆既帯に入るあたりでも、「ははじま丸」をはじめ何隻かの船が観測していたとのこと。
ふじ丸は大きな船ですが、500人が一度に観測できるほどの大きな甲板はさすがにありません。いくつものグループに分かれて、船内各所に散ります。
この章は、ふじ丸の船内配置と照らし合わせながらご覧ください。
私たちがいたのはここ。プールデッキです。豪華客船といえばプールです。
水着があれば泳ぎながら日食観測とか(してませんけど)。熱中症対策にもなった?
ただ、海水なので・・・・機材がさびてしまいそう・・・・
なお、ここは船内で最も高い位置にあります。視界も抜群です。
船尾のスポーツデッキはもっとも広い区画です。もっとも多くの人がここに陣取りました。ただし、目で見る専用のデッキということになっています(といいつつ三脚並んでますけど)。
そして、日食を撮影するのに燃えている人たちは、ここに展開しました。サンデッキと呼ばれる場所です。プールデッキの前、一段低いところになります。一見視界が狭いように見えますが、太陽はほぼ天頂付近にあるので問題ありません。
船首部分は主にファミリー用の区画です。
そして、最も視界最良にして、最も過酷で危険な区画。ここは操舵室と船員さんの居住区の屋上になります。
本来、ここは船客の立ち入りは禁止されています。航海用の機器があるうえ、危険だからです。日食観測のために特別に開放していただきました。ここには、西はりま天文台公園友の会を始め、友の会、同好会のグループが陣取りました。私たちも一応、明石市立天文科学館星の友の会として、ここに入ることができたのですが、結局断念した、というのは前日のレポートの通り。
目で見るのが基本方針ですが、おまけのビデオはちゃんと設置しなければなりません。
これが撮影機材。例のロッテの全面協力を得て(?)開発した特製「パイの実」フィルターボックスがいよいよ実戦投入です。ええ、使いますとも、もちろん。
ですが、何か物足りません。そこでこの方に登場願いました。
うん、これでよし(^^)。
皆既日食の観測は初めてです。以前にも書いたように、目で見ることを主体にして、これにホームビデオを回しっぱなしにするという計画でした。
結果は冒頭でお見せした通り。
船の上なので揺れています。
ただ、波はかなり穏やかでした。
船は皆既帯の中心線上を東方向へ微速前進していました。
食が始まる前、後方には、朝に見た「ぱしふぃっくびいなす」がついていました。しかし、東に進路を変え、視界から消えました(正確には左舷側を追い越して行ったようです)。
前方に小さく船影が現れました。「飛鳥II」です、西回りで世界一周クルーズに向かい、ハワイから横浜へ帰る途中で皆既日食観測という、おそらく最も豪華な観測ツアーです。皆既食の後、右舷でふじ丸とすれ違ったらしいのですが、私は見落としました。
また、観測中、右手の方角から別の客船が接近してきました。「コスタ・クラシカ」というイタリアの客船です。「ふじ丸」と並走した後、前方、「飛鳥II」との間に進んでいきました。
朝、右舷前方にいた「おがさわら丸」は、もう姿が見えませんでした。あとで聞いた話では、北硫黄島の北西海上の皆既帯中心線上にいたとのこと。
接近する「コスタ・クラシカ」
はるかかなたに「飛鳥II」(クリックで拡大。画像が大きいので注意)
私たちのいたプールデッキでは、誰もカウントダウンのアナウンスを行っていません。各自で見当をつけて観測しています。
食が深くなると、なんとなく周囲の光量がおちたのが感じられました。また、暑さも少し和らいでいます。
皆既の数分前、船尾方向を見ると、明らかに他の方角より暗くなっています。
金星を見つけ、周囲から感嘆の声が上がります。
アップしたビデオはこのあたりからはじまります(ただし、撮影は第一接触の直後からはじめています)。
第二接触の時間が迫り、液晶モニタや日食グラス越しでは太陽がほとんど消えかけています。
フィルターを外すタイミングに迷いました。
過去に他の人が撮影したビデオ(特に天文科学館で見たオーストラリア日食)などを見てイメージトレーニングだけはしていました。で、イメージしたぐらいのところで、「えいやっ!」で外しました。
するとあっさりダイヤモンドリングが・・・・・あまりにあっさり現れたので、きょとんとした声が録音されてしまいました(^^;)
ここで肉眼で見上げてみます。
見えた!
ダイアモンドリング!!!
でも、まぶしい・・・・
光が収まるとコロナが広がります。
周囲から歓声と拍手が沸き起こります。私も手を叩いています。
双眼鏡で見た太陽は、まっ白いコロナが刷毛ではいた周囲に伸びていました。
太陽のすぐそばに水星が見えます。シリウスやカノープスまで見た人もいるようです。
だんだん船尾方向が明るくなってくるのに気がつきました。
やがて、太陽の一方の端が明るさを増します。
肉眼で見ていたら、「赤い!赤い!」という叫び声に、あわてて双眼鏡を手探りしました。でも間に合わないと判断、その瞬間、またダイアモンドリングが出現します。
ここでまた拍手が沸き起こります。
終わった終わった、いやあすごかったね、という雰囲気が広がります。
まだ後半の部分食が残っているんですが、終わった感ありありです。
やがて感動に包まれた人々は三々五々引き上げていき、最後の最後には我々明石組だけが残りました。私ももう撮っていなかったけど(^^;
ダイヤモンドリングの見え方は新しい発見でした。
ダイアモンドリングは、ビデオや写真では結構長く継続しているのですが、目では本当に一瞬の現象です。
第二接触で、ビデオでダイヤモンドリングが現れてから、実際に肉眼で見え始めるタイミングまで相当間があるのがわかります。(私が、「あ、ダイアモンドリング・・・」とつぶやいたのは肉眼ではなく液晶モニタを見てのこと)。
第三接触では、すぐに光が強烈に強くなり、直視できなくなります。
そして、皆既中の太陽の見え方。
最近、がしがしに画像処理して、コロナの流線などとても細かく写っているんだけど、なんか、書いたみたいなウソ臭い画像を見ることがあります。
でも、実はそれが最も実物に近いです。
また、結構白黒っぽいイメージがありますが、私は白と黒と青黒に感じました。
ウソ臭い真黒い太陽が、まっしろいコロナを放って、青黒い空に浮かんでいるのです。まるで現実感がありません。誰かが書いたみたい。
そしてなにより、皆既になると、あたりの様相が一変するのです。頭上に非現実的な(現実なんだけど)太陽があって、青黒い空に星、水平線はぐるりと「夕焼け」、ひんやりとした空気。これが陸地なら鳥や動物が騒ぐのでしょう。皆既日食は見るものではなく体感するものでした。ものすごい体験をしました。
去っていく「コスタ・クラシカ」
この人たちも日食を楽しんだことでしょう。
当日の興奮が再び思い出されました。Doctor Blackstarも今回ばかりは改心しShigosengersと共に仲良く過ごしたようで、メデタシメデタシです。
克明な記録をありがとうございます<br>まるで私もこの場にいたような臨場感を感じました<br>日食の日から1週間経ちますが<br>いまだに興奮がさめません<br><br>天気に恵まれ 最高の日食観測ができてよかったですね!!