編集後記


2009年04月02日(木) [長年日記]

「光年」より「パーセク」?

光年廃止」は真に受けてしまった人もちらほらおられるようです。天文関係以外では芸能関係のジョークをメディアが真に受ける事件もあったりして。コンピュータ・ネット関係では以前から盛んなので*1私などはそれなりに鍛えられてきたのですが、そうでない人も多いわけで(たぶん眉をひそめる人もいるでしょうね)、ほどほどにしておくのがいいということでしょう。

でも「光年」のネタは結構深いようです。「光年」は一般の説明用には使われるけれども、天文学的には「天文単位」「パーセク」などがよく用いられ、「光年」はあまり用いられない、と言う話が某会のMLで紹介されました。遠方銀河の距離も、一般には「距離何億光年」などと説明されるけれども、これも赤方偏移値を用いる。

(さすがに私は論文読みまくってないので、このへん、ツッコミを期待)。

そういえば、どこかでみた何かの図(って何?^^;;)はメガパーセクだったし、どこかで見た宇宙の大規模構造の図は距離の単位が赤方偏移値でした。

パーセクも赤方偏移値も「観測値」なので、距離を表す基準にするには確からしいということだそうです。遠方銀河の距離など、実際に観測されるのは赤方偏移値で、光年であらわすにはハッブル定数を使って換算しますが、するとハッブル定数が修正されれば光年も大きく変わってしまう、でも赤方偏移値のままで扱っておけば、変わることはない(測定精度が上がることはあっても)*2

そういえば天文単位も「測定値」ではないかも知れませんが似ていますね。太陽−地球間の距離を知らなくても、これをとりあえず 1 とおくことにより、太陽系の姿や太陽系内各天体の動きを表すことができるわけですね(しかもかなり都合良く)。

一般に当然のように使われている単位も、実はこういうものなんだと理解するのは結構刺激的です。

*1 伝統的なものとしてはジョークRFCが挙げられると思います。たとえば今年も、ぜんぜん普及しないIPv6をSNSを使って普及させる「IPv6 over Social Networks」なんてのが提案されてます(RFC 5514)。ジョークRFCでのプロトコルなどの提案は、本当に実装できそうだったりするのが面白い(リンクを示せませんが、実装した事例もあります)。

*2 つまりハッブル定数がちょっと修正されたぐらいで天文学がひっくり返ることはないのだ。


プロフィール

星を見る、本を読む、そこらを歩いてまわる・・・→詳しく

注目リンク

バックナンバー