この記事にあるチェックリストを人ごとのように眺めていると、たとえば6番の「毎日同じものしか食べない」というのを見て、「じゃ、吉牛*1ばかり食っているあいつもピック病なのかよ」と思うかもしれない。でもそれは単に偏食というだけのこと。たしかにこのリストにある行動はピック病の「症状」だけれども、この「症状」を示した人がことごとく病気というわけでは多分ない。
ポイントは、「昔はそんなことなかったのに」ということと、性格や習慣や年齢の問題にしては明らかに病的だ、ということ。たとえば「やめさせると怒る」のは、薬を断たれた麻薬中毒患者のように暴れると思えばいい。大げさではなく本当にそうなる。しかし、仕事はきちんとこなしたり、車はまともに運転できたりして、案外正常な行動は正常なので、家族でなければなかなか気がつかないかもしれない。あくまで「こんな行動が見られたら要注意」ということで、自己診断できるわけではない。ちゃんと専門医に見てもらうべき。
たとえば私の父は、はじめのころ、すぐに言葉を忘れた。歳のせいにしていたが、今教えたばかりの言葉を数秒で忘れた。父が車を運転している最中に「あの赤青黄色って色がつくやつ、あれ何ていった?」と聞いてきたときはぞっとした。でも名前は忘れても、ちゃんと赤青黄色の意味はわかっていた。
症状が進行すると、ずっと同じ服を着るようになった。私も服にはあまり頓着しないほうで、いつも同じような格好をしているけれども、真冬に着始めたジャンパーを真夏になってもしつこく着続けるようなことはしないし、布団のシーツを変えたら激怒するような事はない。自分が入院させられたのを、新しい会社に住み込みで勤務しているのだと思い込むのは「そんな奴もおるやろ」で片付くようなものではない。饒舌だが語彙が極端に少なくなり、会話が成り立たなくなった。残った言葉はたぶんほとんど仕事用語だったらしいのが哀れだった。
X線CTでは診断がつかず、MRIではじめて脳の異常が判明した。診断書を書いてもらい、そこに記載された病名で、初めてこの病気のことを知った。今このリストを見ると、治療を始める前後の父の言動はほとんど当てはまる。
父が他界したのは震災の翌年でした。早いものです。
*1 失礼、まだ豚丼だ
先に書きたい話題があったので、なかなかその話題に入れない。明日は書けるかな。
脳の障害や、脳内物質のバランスが崩れることによる心身症については、まだまだわからないことが多いようですね。ある「医師(*1)」のウェブサイトにはこう書いてあるのに、別の「医師」のウェブサイトには別のことが書いてあったり。学会とかのサイトに行くとちんぷんかんぷんで。<br>投薬も偶然効くことが確認されたので使っているが、なぜ効果があるのかは解明されていないなんてのもよくあります(*2)。<br><br>とりあえずは、主治医を信じるかどうか、ということのようですが・・・。<br><br>*1 ウェブサイト上の「医師」が国家資格を持った「医師」かどうかは、特に個人で公開しているとわからないので、敢えて括弧付けで表記しています。<br><br>*2 胃潰瘍の薬がうつ病に効いたので使用されているそうです。
脳についてはまだまだ未知の部分が多いですね。<br>薬も色々。<br>私も別件で一時アデホスという脳血流をよくする薬を<br>飲んでいましたがどれ程の効果があるのか<br>みたいなレベルのものでした。<br><br>以前と比べてこういう種類の病気<br>(無気力、親の育て方等といわれてきた症状等も)<br>が世の中にわかってもらえるようになってきているのが<br>救いですね。