【転載】国立天文台・天文ニュース(472)
小惑星(22)カリオペに衛星が発見されました。
この発見は、異なる二組の観測者たちがそれぞれ独立に達成したもので、国際天文電報局に、半日余りを隔てただけで、ほとんど同時に報告されました。偶然とはいえ、めったにないことでしょう。
そのひとつは、ボールダー、サウスウエスト研究所のマーリン(Merline,W.J.)たちからの報告で、マウナケア山の口径3.6メートル、カナダ-フランス-ハワイ望遠鏡により、9月2日(世界時)に直接撮像で発見したものです。2日から3日にかけての観測では、衛星は主星である小惑星本体から見かけの間隔で0.56秒ないし0.28秒離れ、主星より約4.9等暗いと述べられています。
もうひとつの報告は、カリフォルニア工科大学のマーゴット(Margot,J.-L.)たちからのもので、同じくマウナケア山の口径10メートル、ケックII望遠鏡による発見です。8月29日の観測では、主星と衛星との見かけの距離は0.51秒(約1000キロメートル)、明るさの比は23倍前後で、そこから衛星の直径は主星の5分の1くらいであろうと推定しています。その後の8月31日にも確認観測がおこなわれました。
これら二つの報告から、小惑星カリオペに衛星が存在することは確実となりました。これまでにも何度かお知らせしましたように、衛星をもつ小惑星、あるいは連星である小惑星はいくつも発見されています(天文ニュース444,433,425,421,382など)。惑星に衛星があるのと同様に、小惑星に衛星があるのは当たり前という時代になるのかもしれません。
カリオペは、周期4.96年のメインベルトの小惑星で、イギリスのハインド(Hind,J.R.)が1852年に発見したものです。命名は当時の王立天文台長アダムズ(Adams,J.C.)がおこないました。アダムズは天王星の運動のずれから海王星の位置を理論的に予言した人として有名です。小惑星(22)カリオペは、現在「おうし座ツェータ星」の西に11等くらいの明るさで見えています。またカリオペは、本来、ギリシャ神話で文芸や学術をつかさどるとされるミューズの女神9人のひとりです。
2001年9月6日 国立天文台・広報普及室