【転載】国立天文台・天文ニュース(382)

衛星をもつ小惑星


衛星をもつ小惑星、連星の小惑星がつぎつぎに発見されています。

 アメリカ、国立天文台、電離圏センター(National Astronomy and Ionosphere Center)のマーゴット(Margot, J.L.)たちは、プエルト・リコのアレシボ天文台における9月30日から10月3日にかけて実施した2780MHzのレーダー観測で、まだ名前のつけられていない小惑星2000DP_107が連星であることを発見しました。それぞれの直径は800メートルと300メートルで、2.6キロメートル離れて1.77日の周期で回りあっています。そこから計算された主星の密度は、1立方センチ当たり1.6グラムという小さい値です。

 コロラド州ボールダー、サウスウエスト研究所のマーリン(Merline,W.J,)たちは、今年2月、ハワイ、マウナケア山頂の口径3.6メートル、カナダ・フランス・ハワイ望遠鏡に波面補償光学を適用した観測で、小惑星(762)プルコバが衛星をもっていることに気付きました。さらに口径10メートルのケックII望遠鏡による8月の同様の観測で、小惑星(90)アンティオペが連星であることも発見しました。プルコバの衛星は主星よりも4等暗く、800キロメートル離れて4日周期で公転しています。主星の密度は1立方センチ当たり1.8グラムと計算されます。またアンティオペはほとんど同じサイズの連星で、170キロメートル離れて16.5時間の周期で回りあっています。

 小惑星の衛星としては、56キロメートルの大きさの(243)イーダに1.5キロメートルの大きさの衛星ダクティルがあることを1994年にガリレオ探査機が発見しています。またマーリンは、小惑星(45)エウゲニアの衛星を1998年に発見し(天文ニュース247)、この衛星にはプティ・プランス(Petit-Prince;星の王子さま)の名がつけられました。小惑星(216)クレオパトラが連星であるとも伝えられました(天文ニュース310)が、マーリンたちの撮像では、二つに分かれた部分を橋状のものがつないでいるということですから、連星ではない可能性が大きいと思われます。

 衛星をもつ小惑星、連星の小惑星は、その質量や密度の決定に役立ち、小惑星研究に重要な役割を果たすと思われます。いまの状況から見ると、今後まだまだたくさん発見されるのではないでしょうか。

参照

2000年10月5日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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