月の極域で太陽光が当たる日数が判明 〜「かぐや」搭載レーザ高度計による観測の成果〜

 日本の月周回衛星「かぐや (SELENE) 」で取得されたデータの解析の結果、月面で最大の日照率 (1年のうち太陽光が当たる日数の割合) は北の極域で89パーセント、南の極域で86パーセントであり、永久日照地域がないことがはじめて明らかになりました。

 地球の極域で白夜と極夜があるように、月の極域でも半年ごとに白夜と極夜の季節が訪れます。長い長い昼と長い長い夜が、交互に半年間も続くのです。地球と少し事情が違うのは、地球の自転軸が黄道面 (太陽の軌道面) から23.4度傾いているのに対し、月の自転軸は1.5度しか傾いていない点です。月の自転軸の傾きは小さいので、高い山の上などには常に日が差す場所 (永久日照地域)があると考えられてきました。このような場所は温度変化が小さく、また太陽光エネルギーを得やすいことから、将来の月面基地の有力な候補地となります。一方で、深いクレーターの底などには常に日が差さない場所 (永久影) があるとも考えられてきました。永久影では低温状態が保たれているため、古い氷 (H_2O、注1) が存在している可能性が指摘されています。これらの氷は、太陽系の歴史を知る上で重要な手がかりになるとともに、月面での水資源として利用できる可能性があります。

 国立天文台RISE月探査プロジェクト (注2) の研究者は、かぐやに搭載されているレーザ高度計で取得された地形データを用いて、月の極域 (北緯85度以北と南緯85度以南) に、太陽光が1年のうちに何日当たるかを調べてみました。その結果、解析に用いた空間分解能 (分解し得る最小の間隔:北緯85度でおよそ緯度、経度方向それぞれ500メートルの領域に相当) では永久日照地域は存在せず、最大の日照率は北極域では1年365日のうち324日分に相当する89パーセント、南では同じく314日分に相当する86パーセントであることがわかりました。一方、永久影については予測通り、確かに存在することもわかりました。

 これまでにも写真や地上レーダ観測から月の極域の地形データはありましたが、その地形図は極域全体を網羅したものではなく、かつ、精度が悪いものでした。今回の成果は、かぐやのレーザ高度計によって、世界で初めて月の両極域での詳細な3次元地形データが得られたことでもたらされたものと言えるでしょう。

 本研究は、2008年12月30日発行の米国地球物理学専門誌に掲載されました。

文中の「H_2O」という記述の「_」部分は、「2」が下付文字であることを表しています。

注2:RISEは、Research in Selenodesy の略称。Selenodesy は測月学のこと。地球上の測地学 (地球の形や重力、その変動を研究する学問) を月に応用したもの。国立天文台 RISE 月探査プロジェクトは、かぐやプロジェクトの一部を担い、月の重力場や地形を詳細に調査し、月の起源と進化の解明を目指す。

参照:

2009年1月30日           国立天文台・広報室

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【訂正】国立天文台 アストロ・トピックス (442) で、参照部分に以下の誤り
 がありました。お詫びして訂正いたします。
 正) CBET No. 1673 : SUPERNOVA 2009N IN NGC 4487 (2009 Jan 26)
 誤) CBET No. 1671 : SUPERNOVA 2009N IN NGC 4487 (2009 Jan 26)
転載:ふくはらなおひと(福原直人)