山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、1月24日と25日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.6等の超新星を発見しました。この超新星は、おとめ座方向にある NGC 4487 銀河の中にあり、栃木県高根沢町にある板垣さんご自身の観測所の口径30センチメートルの反射望遠鏡 (f/7.8) を用いたCCD観測 (限界等級19.0等) により撮影された複数枚の画像の中から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2009N」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り。
発見日時 2009年1月24.86日 = 1月24日20時38分 (世界時) 赤経 12時 31分 09.46秒 赤緯 -8度 02分 56.3秒 (2000年分点) 発見等級 16.6等
この超新星は NGC 4487 銀河の中心から東に75秒角、北に18秒角離れた位置にあります。
板垣さんは、2006年12月19日と今年の1月3日にこの場所を観測していましたが、そのときの画像 (限界等級はそれぞれ19.5等と18等) にも、またDSS (注1) の画像にも、この天体は写っていませんでした。
中野さんは、埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんが1月25日に25センチメートル反射望遠鏡 (f/5) を用いてこの天体を観測し、15.8等だったことを付け加えています。
またハーバード・スミソニアン天体物理学センターの P.Challis さんは、1月25日の分光観測によって得られたスペクトルの示す特徴から、この天体が、II型 (注2) の超新星と推定されることを報告しています。
板垣さんによる超新星発見は、今年に入って最初ですが、今回の発見を含め、板垣さんの超新星発見数は通算45個 (独立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。
注1:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
注2:超新星とは星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさで輝く現象をいう。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星がなんらかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するものがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、II型と観測的に分類されている。
2009年1月27日 国立天文台・広報室