宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が打ち上げた月周回衛星「かぐや (SELENE) 」は、昨年12月より本格的な月の探査を開始し、搭載された14の観測装置による観測を続けています。
このたび「かぐや」の最新の成果として、これまで探査がおこなわれていなかった地域も含め、月のすべての地域をカバーする月面の地形データが、観測装置のひとつであるレーザ高度計 (LALT) によって取得されました。このデータを国立天文台が解析し、さらに国土地理院が月の地形図を作成、JAXA、国立天文台、国土地理院の3機関が、4月9日、同時にこの地形図を公開しました。
レーザ高度計は、「かぐや」の主衛星から月面に向かってレーザ光を発射し、月面で反射された光が戻るまでの往復時間を測ることで、主衛星と月面間の直線距離を測る装置です。レーザ光の反射を利用することで、極域のクレーターの中など太陽光の当たらない場所の地形も測定できる点に特長があります。
現在レーザ高度計は、従来の衛星で探査されていない極域 (緯度75度以上)を含む月全球の表面形状 (地形の情報) を取得しています。また、計測された高度データ数は従来のモデルであるULCN 2005 (注1) を1桁以上上回り、3月末で600万点以上となっています。
今回発表した地形図は、レーザ高度計による2週間分の観測データの処理をおこない、作成したものです。今後、さらに観測を続ければ、計測点の密度が向上し、より精密な表面形状が取得され、より高精度な地形図が作成されると期待されます。
また、レーザ高度計による月全球の地形情報はその他の科学ミッションにも不可欠な情報であり、例えばRSAT/VRADミッション (注2) から得られる重力場データと合わせて、地殻の厚さの変化など月の内部構造についての情報を得るのに用いることができると期待されます。
注1:1994年に米国が打ち上げたクレメンタイン月探査機の画像から、写真測量で決定した基準点など総計272931点の月標高基準点網。2005年に米国地質調査所で作製。
注2:主衛星と、リレー衛星 (おきな)、VRAD衛星 (おうな) と呼ばれる2つの子衛星を同時に用いて、月の裏側も含めた重力場を精密に測定するミッション
2008年4月9日 国立天文台・広報室