編集後記


2014年09月20日(土) [長年日記]

特別展「明月記と最新宇宙像」

上洛。

天下統一のためではなく(だったら上京する)、京都大学総合博物館で開催中の特別展「明月記と最新宇宙像」見学のためです。

明月記(めいげつき 定家の子孫である冷泉家では「めいげっき」と呼ぶ)は、鎌倉時代初期の歌人、藤原定家が19歳(1180年)~74歳(1235年)まで56年間にわたり書き記した日記です*1。自筆本が冷泉家時雨亭文庫*2の他、各地に残されており、冷泉家所蔵のものは国宝に指定されています。

公家の日記は現代人が付ける日記とは異なり、有職故実、公務である儀式や行事の式次第を書き記して子孫に伝えるという役割を持っていました。明月記も定家が自ら体験したり収集した知識を多く書き残してあり、当時の公家社会を知る上で一級の資料とされています。一方、かに星雲に代表される過去の超新星の記録があり、天文学的にも大変貴重な資料とされています。

特別展では、冷泉家時雨亭文庫が所蔵する自筆原本のうち、寛喜2年(1230年)冬記が展示されています。巻物なので、そのうちの超新星を含む客星の記述の部分だけ広げて見えるようにしてあります。

客星についての記述は、11月8日にあります。それに先立つ11月1日に客星が出現し、関心を持った定家が陰陽師の安倍泰俊に過去の客星について調べさせ、その返事を明月記に記したものになります。書き写したのではなく、返書をそのまま貼りつけてあるようです。返書には、過去8件の客星がリストアップされていましたが、そのうち3件が超新星の記録と判明しています。

実は肉眼超新星の記録は、有史上、全世界で8件しかありません*3。そのうちの3件(1006年おおかみ座、1054年おうし座、1181年カシオペア座)が明月記に記されているのです。

肉眼超新星の一覧*4
出現年 星座 備考
185年 ケンタウルス座  
393年 さそり座  
1006年 おおかみ座 明月記に記載
月・太陽を除き、有史上最も視等級が明るくなった天体
1054年 おうし座 明月記に記載
M1 かに星雲
1181年 カシオペア座 明月記に記載
1572年 カシオペア座 ティコの星
1604年 へびつかい座 ケプラーの星
1987年 かじき座 SN1987A。大マゼラン雲に出現

この明月記が世界に知られるようになったのは、神戸のアマチュア天文家、射場保昭氏(1894-1957)が1934年に欧米の天文学者に紹介したことがきっかけです。会場では京都における天文学とアマチュア天文の経緯を、山本一清氏をはじめとする代表的な人物の事績を紹介する形で展示してい ました。

射場保昭氏については、最近までよくわかっておらず(パンフでも「謎のアマチュア天文家」と…)、最近になって親族の存在が判明し、その人物像が明らかになったとのこと。

明月記実物展示は9月28日までということです。

実物を見ることができたのは大変いい体験でした。超新星の記録は、年代的に定家自身が見たわけではない、ということは聞き知っていましたが、単なる聞き書き的なものではなく、陰陽師に調べさせてその結果を載せていたということを知ることができました。

定家の陰に隠れてしまいましたが、この記録の背景には、代々の陰陽師・天文博士がそれらの超新星を目撃して記録に残してきた、ということがあります。それを定家の依頼により安倍泰俊が過去の記録から拾い出しました。後世になり明月記の記述を発見した人がいて、射場氏が天文学者に紹介、実に800年の時をかけて、平安時代の目撃記録が天文学につながったということです。肝心の天文博士たちの記録は残っていないようなので、明月記は大変貴重な資料となっています。

*1 もっと長い期間書いていたかもという説も

*2 冷泉家の文化遺産を保存している公益財団法人

*3 うち1件は1987年大マゼラン雲に出現したSN1987A。

*4 1987A以外は展示からメモしました

鴨川周辺

四条大橋付近。名物の床。

もう一つの鴨川名物は見られず*1。もう少し北の方か?

テレビなんかで鴨川というとこの辺がよく映るでしょうか。特に京都が舞台の現代ドラマ*2でよく見かける飛び石もここです。

*1 あの等間隔で並ぶやつ(^^)

*2 サスペンスものなど特に

下鴨神社

ここまで来ると参詣しないわけにはいきません。

糺の森

夢枕獏の「陰陽師」シリーズで、目玉を抜き取られた男の目玉がこの小川の中に捨てられていて、それを安倍晴明が探し出すシーンがありました。

安倍泰俊は安倍晴明の子孫です。

下鴨神社

みたらし社と御手洗川。みたらし団子の発祥の地

「君が代」の「さざれ石」とはこの石のこと。

天体観望会

明石へ戻ってきてから、天文科学館の観望会へ。今月はお客さん。

テーマは「M57・アルビレオ」。ただ曇りがちではたしてみられるかどうか。

プラネタリウムでの解説の後で出てみると、晴れの領域も広がって多少は星も。

最初に案内された4階でアルビレオを。順番が来て16階に向かいましたが、M57はこの時雲の中にあり見えないので、やっぱりアルビレオを。

4階に戻り、こと座のあたりが晴れているなと思ったら、天ボラさんの一人*1にM57入れて欲しいと頼まれました。

その場所ではこと座が見えないので、見える位置に移動し、導入。それから終了まで臨時に案内を務めました。

*1 まだ若葉マークの人でしたので。


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