さそり座に今年2個目の新星

前原裕之(京都大学花山天文台)

 1年で最も暑い時期が過ぎ、夏の星座も夜の早い時間に西の空に移るようになってきました。この夏にはさそり座デルタ星が1等級に増光して話題となりましたが(vsolj-news 273)、そのさそり座はこの時期には日本からは夕方に南西の低い空に見えています。さそり座のアンタレスから南に15度ほど、日本の本州付近からは南中時でもおよそ15度ほどの高度にしかならない場所に新星が発見されました。発見したのは三重県亀山市の中村祐二(なかむらゆうじ)さんと、オーストラリアのJohn Seachさんで、今年さそり座に発見された新星としては、さそり座V1312(vsolj-news 271)に次いて2個目となります。

 Seachさんは6.37日(世界時、以下同様)に50mmレンズで撮影した画像から、中村さんは9月6.431日に150mmレンズで撮影した画像から、それぞれ独立に9等台の新体を発見しました。この天体は茨城県の清田さんや千葉県の野口さん、筆者など日本やオーストラリア、イタリアの観測者によって確認されました。この天体の位置は

赤経  16時 36分 44.29秒
赤緯 -41度 32分 37.7 秒

です(E. Guidoさん他による観測)。

 この天体の分光観測は、京都産業大学神山天文台の口径 1.3m 荒木望遠鏡とチリのセロ・トロロ インターアメリカン天文台にある口径1.5m SMARTS望遠鏡で行なわれました。その結果、幅の広い水素のバルマー系列の輝線や、1階電離した(電子を1つ失なった)鉄の輝線がみられることから、この天体が新星であることが判明しました。

 この新星の位置には15等ほどの天体が過去の写真に写っており、この天体が爆発したものだとすると、増光幅は6等ほどしかありません。これは通常の古典新星としては非常に小さく、反復新星(再発新星、回帰新星などとも呼ばれる)のへびつかい座RS(vsolj-news 150)と同程度です。また、SMARTS望遠鏡の分光観測の結果からも、スペクトルが反復新星の爆発初期のものと似ていると指摘されており、今後の光度やスペクトルの観測に加えて、過去に撮影された写真や画像の調査も必要と言えます。

参考文献

2011年9月10日

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