今年は例年よりも早く梅雨入りした地方が多かったため、最近は雨の日が多いですが、6月上旬の夜半ごろには晴れていれば夏の星座の一つのさそり座が南の空に見えます。さそり座は私たちの銀河系の中心方向に近く、これまでに数多くの新星が発見されている星座の一つです。そのさそり座の尻尾の付け根あたりのμ1, μ2 Scoの近くに10等ほどの新星が発見されました。
発見したのは、オーストラリアのJohn Seachさんで、6月1.40日(世界時)に50mmレンズとデジタルカメラで撮影した画像から、9.5等級の新天体を発見しました。Seachさんが5月30日に撮影した画像には、この天の位置に11等よりも明るい天体は写っていませんでした。
この天体はArto OksanenさんとCaisey Harlingtenさんによって、チリにある口径50cmの望遠鏡を用いて確認されました。彼等の観測によると、6月2.333~2.375日の間に1時間あたり0.15等の割合で暗くなっていく様子が捉えられました。この天体の位置は、
赤経:16時55分09.46秒 赤緯:-38度38分04.5秒 (2000.0年分点)
と報告されています(E. GuidoさんとG.Sosteroさんによる)。
この天体の分光観測は、広島大学東広島天文台の1.5mかなた望遠鏡と、京都産業大学神山天文台の1.3m荒木望遠鏡によってそれぞれ行なわれました。両天文台の観測によるとこの天体のスペクトルには幅の広い水素のHα輝線がみられることから、この天体が古典新星であることが判明しました。また、星間物質による強い吸収がみられることも報告されています。
輝線の幅から推定される膨張速度は秒速4500kmと速いことや、非対称な輝線形状が観測されていることに加えて、ガンマ線バースト観測衛星のSwiftによるX線観測も今後予定されており、しばらくは目が離せない観測対象と言えるでしょう。
参考文献
- CBET 2735 (2011 June 3)
- vsnet-alert 13371, 13372
- 広島大学 東広島天文台で観測されたスペクトル
- 京都産業大学 神山天文台で観測されたスペクトル