昨年2月のへびつかい座RSの再発(VSOLJニュース 150)、今年2月のさそり座V1280(VSOLJニュース 167,168)と、肉眼でも見える新星がこのところ話題になっています。今回発見された2007年はくちょう座新星は、発見等級が7.5等と、やはり比較的明るいもので、今後の変化が楽しみです。
2007年はくちょう座新星を発見されたのは、岡山県津山市にお住いの多胡昭彦(たごあきひこ)さんです。多胡さんは、昨年のカシオペヤ座のマイクロレンズ現象(VSOLJニュース 162)を検出されたり、これまでにも数多くの新星を発見されるなど、精力的に活躍されている天体捜索者です。
多胡さんは、3月15.787日(世界時、以下同様)に撮影したデジタルカメラ画像に、7.4等級の新しい星を見つけました。翌日の16.75日にも7.5等級で確認されましたが、12.796日の画像では12等より明るい天体はこの位置にはありません。岡山県井原市の美星スペースガードセンターでもこの天体が確認され、位置が以下のように測定されました。赤い光に感度の高い、フィルターなしCCDでの観測で、明るさは6.7等とされています。
赤経: 20時28分12.52秒 赤緯: +41度48分36.5秒 (2000年分点)
この位置には過去に18.5等級(red等級)ほどの赤く暗い星が観測されており、もしこの星が増光したのなら、12等ほど、つまり10万倍近くも明るくなったものです。
岡山県井原市の美星天文台、兵庫県佐用群佐用町の西はりま天文台では、16.8日(日本時間で17日未明)前後にこの天体のスペクトル観測を行ないました。たいへん赤いスペクトルに、新星特有のP Cyg型を示す水素線が見られたため、吸収を強く受けた、極大近くの新星と考えられます。膨張速度は1000kmsほどです。たいへん赤いため、肉眼ではCCDでの撮影に比べてやや暗い等級が報告されていますが、今後の変化を注目していきたいところです。
参考文献:
- CBET 890 (2007 Mar. 16)
- CBET 891 (2007 Mar. 17)
- 美星天文台撮影のスペクトル
- 西はりま天文台撮影のスペクトル
2007年3月18日