くじら座ο(オミクロン)というバイエル名を持つ変光星ミラは、年老いた星(赤色巨星)が膨らんだり縮んだりすることで明るさを変える脈動変光星の代表 例で、最初に発見された変光星としても有名です。周期は330日あまり、変光範囲は2.0等〜10.1等とされていますが、極大等級はそのたびに異なっており、 ここのところ極大でも3等前後までしか明るくなりませんでした。
ところが、今回の増光期には、2.0等を超え、1.9等との報告もあるほどです。歴史的には、1779年に1.2等という特に明るい観測がありますが、それ以降1.8 等より明るくなったことはありません。ミラは現在、夕方の西空高く、見やすい位置にありますから、今回のたいへん明るい極大をぜひご自分の眼で確認し てください。
一方、VSOLJニュース(167)で紹介した、中村さんと櫻井さんが発見されたさそり座の新星には、さそり座V1280という変光星名が付けられました。4日の発 見時には9等級だったものが、その後もじわじわと明るくなり、先ほど欧米から来た報告では遂に4.0等よりも明るくなりました。観測報告の抜粋です。
日時(世界時) 眼視等級 観測者 2月7.848日 8.4等 広沢憲治(愛知県) 10.844日 7.5等 金井清高(群馬県) 11.794日 7.0等 〃 12.790日 6.2等 〃 13.246日 6.0等 J. Ripero (スペイン) 14.782日 5.4等 金井 15.826日 4.7等 金井 15.867日 4.2等 金井 16.231日 3.8等 P. Schmeer (ドイツ) 16.458日 3.7等 M. Simonsen (アメリカ)
4等よりも明るくなった新星は、1999年のほ座の新星(ほ座V382, 2.5等)および同年のわし座の新星(V1494 Aql, 3.6等)以来です。
岡山県井原市の藤井貢(ふじいみつぐ)さん、西はりま天文台の内藤博之(ないとうひろゆき)さんが撮影したスペクトル(2月12日〜14日)では、発見直後よ りもずっと高温を思わせるものとなっており、その変化は目をみはるものがあります。今後、どこまで明るくなっていくのか、目が離せません。
参考文献
- IAUC 8807 (2007 Feb. 16)
- 西はりま天文台撮影のスペクトル
- 藤井貢さん撮影のスペクトル
2007年2月17日