静岡県掛川市にお住いの西村栄男(にしむらひでお)さんと、三重県亀山市にお住まいの中村祐二(なかむらゆうじ)さんが、3月15.82日(世界時、以下同様)の観測から、ほとんど同時に、いて座に約9等の新星が輝いているのを発見しました。
どちらも撮影した写真上による発見で、西村さんは洲本市の中野主一(なかのしゅいち)さんを通じて、中村さんは国立天文台新天体情報室を通じて国際天文学連合へ報告され、「2004年いて座新星 (V5114 Sgr = Nova Sgr 2004)」と名前が付けられました。チリのリラー(W. Liller)さんも、17.34日に、独立発見しています。
西村さんが12.82日に撮影した写真には、この新星は写っていなかったということですので、急速に明るくなったものと思われます。米カンザス州のウエスト(D. West)さんによる精測位置は、下記の通りです。
赤経 18時 19分 32.29秒 赤緯 -28度 36分 35.7秒 (2000年分点)
これは、いて座の弓の中ほどにあたります。
九州大学の山岡均(やまおかひとし)さんによれば、この位置には、赤外線やX線で見て明るい天体もなく、おそらく典型的な新星の可能性が強いとのことでした。その後、スペインのカナリア諸島や岡山県の藤井貢(ふじいみつぐ)さんの分光観測によって、この天体が、水素のバルマー線が強い古典的な新星であることが判明しました。現在が最大光度らしく、今後急速に減光するので、肉眼で見えることはないでしょう。
今回、この新星を発見した西村さんも中村さんも、どちらも新天体発見のベテランです。西村さんは1994年7月に発見された中村・西村・マックホルツ彗星(C/1994 N1)の発見者ですし、中村さんも1990年3月にチェルニス・木内・中村彗星(C/1990 E1)を発見されています。さらに、西村さんは2003年9月にたて座の新星状天体を発見していますし(国立天文台・天文ニュース (668))、中村さんは2001年7月に、はくちょう座新星 (V2274 Cyg = Nova Cyg 2001)(国立天文台・天文ニュース (458))、2002年1月には、へびつかい座新星 (V2540 Oph = Nova Oph 2002)(国立天文台・天文ニュース (518))を発見しています。
2004年3月20日 国立天文台・広報普及室