恒星の二重円盤構造の劇的変化を世界初観測

 兵庫県立西はりま天文台、大阪教育大学などからなる研究グループ (注1) は、口径2メートルの「なゆた望遠鏡」 (兵庫県立西はりま天文台) (注2) を使ったモニター観測から、すばる (M45、プレアデス散開星団) に属する恒星プレオネの周囲に存在する二重円盤が1年ほどの間に変化し、内側の円盤の大きさが2倍となり、逆に外側の円盤は消滅寸前となっていることを明らかにしました。これは、恒星における二重円盤構造の劇的変化を世界で初めてとらえたことになります。

 プレオネは、すばるの中で7番目に明るい5等星です。スペクトル型はB型で恒星の表面温度は約1万2千度、年齢は1億歳程度と考えられています。

 1972年にカナダのガリバーらによって、このプレオネの周囲に高温ガス円盤が発見されましたが、2005年12月には、なゆた望遠鏡などによる分光観測から、その円盤のさらに内側に新たな円盤が形成されていることが発見されています(国立天文台 アストロ・トピックス (192) ) 。

 国立天文台の堂平観測所 (当時) と岡山天体物理観測所で得られた偏光観測データをもとに考えると、外側の円盤 (旧円盤) と内側の円盤 (新円盤) は、約100度の角度で傾斜していると推測できます。周囲に二重のガス円盤を持つ恒星はこの他にも4例ほど知られていますが、2つの円盤が傾斜している恒星の発見はプレオネが世界初です。

 この2005年の新円盤発見以降も、なゆた望遠鏡を使った分光観測を継続したところ、水素の輝線スペクトルなどに顕著な変化が見られました。これは、プレオネの円盤の状態が劇的に変化したことを示すものです。この観測データの詳細な解析から、新円盤はしだいに成長して大きくなり、一方で旧円盤は内側から崩壊して急速に衰退したと考えられます (現在はほぼ消滅していると考えられます) 。なゆた望遠鏡は、1年ほどの短期間に、新旧の二重円盤が共存しながら交代するというたいへん珍しい現象を、世界で初めてとらえたことになります。

 今後は、国立天文台岡山天体物理観測所の188センチメートル望遠鏡も利用してモニター観測を継続し、2つの円盤の形状の変化や相互作用などプレオネの謎に迫ろうと考えています。

 この研究成果は、8月25日発行の日本天文学会欧文研究報告誌に掲載されました。

(注1) プレオネ研究グループ
   田中謙一、定金晃三 (大阪教育大学) 、
   鳴沢真也、内藤博之、坂元誠 (西はりま天文台) 、
   神戸栄治 (国立天文台岡山天体物理観測所) 、
   片平順一 (元堺市教育センター) 、平田龍幸 (元京都大学) 他

(注2) 「なゆた望遠鏡」は、国内に設置された望遠鏡としては最大、公開用望遠鏡としては世界最大の、口径2メートルの望遠鏡です (国立天文台アストロ・トピックス (63) ) 。

※この記事は、兵庫県立西はりま天文台の鳴沢真也さんからいただいた情報を元に作成しました。

参照:

2007年8月27日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)