「プレオネ研究グループ」は、兵庫県立西はりま天文台のなゆた望遠鏡(国内最大の口径2メートル)を使ってプレオネという恒星のスペクトルを観測した結果、この星の周囲に2本のガス円盤が交差していることを発見しました。恒星に二重の円盤が確認されたのは、初めてのことです。
星のスペクトルを詳しく分析することで、星についての様々な情報を得ることができます。なゆた望遠鏡のナスミス焦点部には星の光をスペクトルにする可視光分光器という装置が取りつけられています。2005年の秋からなゆた望遠鏡でのスペクトル観測がスタートし、プレオネのスペクトルが観測されました。
プレオネはプレアデス散開星団(すばる)の中で7番目に明るい星で、明るさは5等級です。スペクトル型の分類ではB型に属し、表面温度は約1万2千度です。地球からの距離は約400光年で、年齢は1億歳程度。半径は太陽のおよそ4倍です。
2005年12月になゆた望遠鏡で得られたプレオネのスペクトルを解析すると、カルシウムの波長の光が強く吸収されていることがわかりました。過去の観測からこれは新しく高温のガス円盤が形成されたことを示しています。2006年1月に美星天文台で行われた観測でも吸収が確認され、新しい円盤の形成が確定しました。2004年12月の美星天文台でのスペクトル観測では、円盤が誕生した兆候はありませんでしたので、新しい円盤は2005年春〜秋頃に形成が始まったと推定されます。
1973年にカナダの研究グループがプレオネの円盤をすでに発見していましたが、その古い円盤も新しい円盤を囲むような形状で、今でも存在していることも判明しました。これはプレオネの鉄の吸収線の形状を調べることによって明らかになりました。B型星の約20パーセントは高温ガス円盤を持ち、そのような星は特にB型輝線星と呼ばれていますが、二重の円盤が発見されたのは今回が初めてです。さらに驚くべきことには、新しい円盤と古い円盤は60度の角度で交差していることもわかりました。古い円盤は幅がプレオネ本体の2〜7倍で温度が8千〜1万度、新しい円盤の幅は星の2倍で、温度は7千〜8千度と考えられています。
プレオネになぜ円盤が形成されるのか、詳しくはわかっていません。プレオネは高速自転しており、赤道方向につぶれた形状になっていますので、赤道部からはガスが飛び出しやすくなっています。プレオネの表面がもし振動していると、それにともなった波が高くなることが考えられ、この場合はさらにガスが噴出しやすくなります。また、プレオネは連星系なのですが、伴星がすぐ近くまで接近しプレオネ本体からガスを引きちぎったとする説もあります。
なゆた望遠鏡は、この謎を解明すべくプレオネの継続観測を行っています。
片平順一(堺市教育センター)、鳴沢真也・尾崎忍夫(兵庫県立西はりま天文台)、
井上和俊(大阪府立箕面高校)、川端善仁(美星天文台)、
田中賢一・定金晃三(大阪教育大学)、平田龍幸(京都大学)
※この原稿は兵庫県立西はりま天文台の鳴沢真也(なるさわしんや)さんからいただいたものです。
2006年2月24日 国立天文台・広報室
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