反復新星のさそり座Uが12年ぶりに新星爆発

著者:前原裕之(国立天文台)

さそり座Uは1863年5月20日にN. R. Pogsonによってさそり座に出現した9.1等の新星として発見されました。Pogsonの観測によるとこの新星は発見後急速に減光し、5月28日には12.4等まで暗くなり6月に入ると13.3等より暗く見えなくなりました。Pogsonの発見から80年近くが経った1940年に、ハーバード天文台の写真乾板の調査から、この新星が1906年5月と1936年6-7月にもそれぞれ8.8等まで明るくなっていたことがH. L. Thomasによって発見され、さそり座Uが繰り返し新星爆発を起こす「反復新星(※1)」であることが明らかになりました。このような天体は我々の銀河系内では10個程度が知られており、昨年8月にはへびつかい座RSが15年ぶりの新星爆発を起こしたことが記憶に新しいところです(vsolj-news 378)。

これまでの観測や研究から、さそり座Uは1863年の発見以来、1906年、1917年、1936年、1945年、1969年、1979年、1987年、1999年、2010年に新星爆発が確認されており、我々の銀河系内に発見されている反復新星の中では最も短い間隔で新星爆発を起こす天体として知られています。新星爆発が起きてから次の爆発までの間隔はおよそ10年であることから、次の新星爆発の早期発見を狙って数年前から密な監視が行なわれていました。

今回の新星爆発は長崎県の森山雅行さんによって日本時間の6月7日未明に発見発見されました。森山さんは6月6.566日(世界時; 以下同様)にこの天体を観測しましたが、この時は17.3等以下でまだ明るくなっていませんでした。とろこが、1回目の観測からわずか3時間40分後の6月6.720日の観測でこの天体が11.4等に明るくなっていることを発見しました。長崎県の前田さんが6.575日に行った観測でも16等以下だったことから、発見前の3時間半ほどの間に新星爆発を起こし数百倍も明るくなったものと思われます。森山さんの発見報告を受けて行なわれた観測では、6.773日に9.2等、6.886日に8.7等、7.008日に8.2等と急速に明るくなっていく様子が観測され、日本時間の7日昼には8等ほどまで明るくなりました。その後は前回2010年や前々回1999年の増光時と同様に減光を始め、日本時間の7日夜には8.5等、8日夜には9.5等ほどまで急速に暗くなったことが観測されました。小口径の望遠鏡で眼視的に見ることができるのは今週いっぱいくらいと思われます。今後の明るさの変化などが注目されます。

2022年 6月 9日

参考文献

※1:"recurrent nova"の日本語訳で、「回帰新星」、「再発新星」などと呼ばれることもあります。

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