6月上旬の午後9時ごろになると、晴れていれば、南東の低い空にさそり座の1等星のアンタレスが赤く光っているのが見えます。そのさそり座の尾の部分にあたる青白い星のシャウラ(Shaula = λ Sco)のすぐ北に新星が発見されました。新星を発見したのは、福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームで、今年2月にケフェウス座に出現した新星(V809 Cep = Nova Cephei 2013; vsolj-news 294)に次ぐ発見になります。
西山さんと椛島さんは6月3.6146日(世界時)に、焦点距離105mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した2枚の画像から、11.1等の新天体をさそり座の中に発見しました。また、この直後の3.6728日には口径40cmの望遠鏡を用いて確認観測を行ないました。お二人の観測によるこの天体の位置は
赤経: 17時33分59.43秒 赤緯:-36°06分21.6 秒 (2000.0年分点)
です。西山さんと椛島さんが5月17日と30日に撮影した画像には、この天体は13.4等以下で写っていませんでした。
この天体は、茨城県の清田さんが3.589日に撮影した画像と、福岡県の高尾さんが3.628日に撮影した画像にも写っていることが報告されました。また、宮城県の遊佐さんをはじめ、国内外の複数の観測者による確認観測では、この天体は非常に赤い色をしていることが報告されました。フランスのC. Builさんは、6月3.960日にこの天体の分光観測を行い、この天体が非常に赤い色をした天体であること、および強いHα輝線を示すことを報告しました。これらの観測結果から、この天体は銀河面のガスやちり等の星間物質による影響で赤く見えている古典新星であると考えられます。
分光観測の結果から、この天体は、新星爆発による物質の膨張速度が比較的遅く(秒速1200km)、ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると考えられます。このタイプの新星の中には、ダスト形成による急速な減光を示すものが知られており、同じタイプの新星だった、西山さんと椛島さんによって2月に発見されたケフェウス座の新星も、3月にダスト形成によると思われる減光が観測されました。今後の光度変化の様子などが注目されます。
参考文献
- CBET 3542 (2013 June 4)
新星の画像
新星のスペクトル
C. Builさんの観測結果
※Nova Cep 2013のダスト形成による減光の報告
2013年6月5日