天の川のほとりにあるケフェウス座は秋に見やすい星座で、2月には夕方に北西の空に見ることができます。そのケフェウス座の中のカシオペヤ座との境界付近に新星が発見されました。新星を発見したのは、福岡県久留米市の西山浩一(にしやまこういち)さんと佐賀県みやき町の椛島冨士夫(かばしまふじお)さんのチームで、昨年10月のわし座新星(Nova Aquilae 2012; vsolj-news 292)の発見に次ぐ銀河系内新星の発見です。
西山さんと椛島さんは2月2.4119日(世界時)に、焦点距離105mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、10.3等の新天体を発見し、直後に口径40cmの望遠鏡を用いて確認観測を行ないました。お二人の観測によるこの天体の位置は
赤経: 23時08分04.71秒 赤緯:+60°46分52.1秒 (2000.0年分点)
です。この天体は西山さんと椛島さんが1月23日と26日に撮影した画像には写っていませんでしたが、1月28日には11.9等、30日には11.0等で写っていたことが報告されました。また、筆者に行なっているサーベイでも1月30日にV等級で12等、31日にV等級で11.3等ほどで写っていたことが分かりました。発見後の確認観測は、茨城県の清田さんや山口県の吉本さんをはじめ、国内外の観測者によって行なわれ、発見された天体が赤い色をしていることや、発見時からの明るさの変化があまりないことなどが分かりました。
この天体の分光観測は岡山理科大学の今村さんと岡山県の藤井さんによって、2月2日にそれぞれ行なわれました。この天体のスペクトルには、水素のバルマー系列や1階電離した鉄などの輝線がみられたことから、この天体が古典新星であることが判明しました。また、Hαなどの輝線ははくちょう座P型プロファイルを示すことも分かり、輝線のピークと吸収線の底の波長の差から、新星爆発による物質の膨張速度は秒速1000km程度であると報告されました。
ケフェウス座に新星が発見されたのは、2001年に撮影された画像からMISAOプロジェクトによって発見されたMisV1181=V709 Cep以来12年ぶり、分光観測で間違いなく新星と確認された天体の発見としては、1971年に桑野さんによって発見されたIV Cep以来42年ぶりです。この新星は、膨張速度が比較的遅いことから、ゆっくりと暗くなるタイプの新星であると考えられます。しかし、このタイプの新星の中には、複数回の増減光を繰り返したり、ダスト形成による急速な減光を示すものも知られており、この新星の今後の光度変化などが注目されます。
参考文献
- CBET 3397 (2013 February 3)
- 新星の画像
- 新星のスペクトル
2013年2月8日