正体のはっきりしない天体、オリオン座GRが97年ぶりに増光

著者 :大島誠人(京大理)

「新星」とされている天体の中には、実際に新星現象であると判明しているものだけではなく「1~数枚の写真乾板のみで確認されているため、新星と便宜上分類されているが確証はない天体」がいくつかあります。これらの正体はよくわかっていないものが多く、中にはその後に増光を示し詳しい観測が行われ、矮新星であることが判明した天体もあります。VSOLJニュースNo 275で紹介したおひつじ座SVもそのような天体でした。

 オリオン座GRは1916年1月から2月にかけて撮られた6枚の乾板上にみられる新天体として報告された天体です。報告されたもっとも明るい等級は11.9等で、1ヶ月ほどの間は像が見られたことから、長い間新星でないかと考えられてきました。しかし、あくまで新星のスペクトルなどが確認されたわけではないため、他のタイプの天体である可能性も残されており、特に矮新星ではないかと疑う研究者もいました。静穏時に対応する天体がどの天体かについても長い間よくわかっていませんでしたが、2000年にV等級で22.8等級の天体と同定されました。

 2013年2月11.476日にオーストラリアのスタビングス氏が、この天体が13.0等まで増光していることを発見、報告しました。この報告をうけてホヴェル氏やバチンスキー氏らによる追観測が行われ、増光が間違いないことが確認されました。日本でも京都大学の40cm望遠鏡によって増光しているところがとらえられています。

 現在のところ、まだこの天体が矮新星か新星かもはっきり分かっておらず、これからの観測による解明が望まれます。しかし、もし矮新星である場合、非常に増光がまれなことや増光の振幅が約10等と非常に大きいこと、さらにSDSS(スローン全天スカイサーベイ)の対応天体と思われる像の色が増光のまれな矮新星のそれによく似ているという指摘があることなどから、矮新星の中でも軌道周期が短く、増光もまれな「や座WZ型矮新星」である可能性が高いと考えられます。もしや座WZ型矮新星である場合、増光直後に早期スーパーハンプと呼ばれる軌道周期に一致する小振幅の変動が見られることが期待されます。

参考文献

2013年2月13日

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