8月3日付けのVSOLJニュース(274)で、暗めのIa型超新星2011ehについて紹介しましたが、それからの1週間で、Ia型超新星がさらに2個、日本の天文愛好家によって発見されました。2つの超新星は、距離は違うのに同じような明るさで見えています。近いほうが、超新星2011ehと同様、Ia型超新星のなかでも暗めのものだったからです。
1個目は、距離20Mpcほどという近傍の銀河NGC 918の近くに出現された超新星2011ekです。この天体は、山形市の板垣公一さんが、8月4.77日(世界時、以下同様)に撮影した画像に16.4等で発見しました。天体の位置は、
赤経 2時25分48.89秒 赤緯 +18度32分00.0秒 (2000年分点)
で、渦巻銀河であるNGC 918の中心から西に27秒角西、北に133秒角にあたります。画像に写る腕よりもかなり外側です。同じ板垣さんの観測で、5.62日には16.0等、6.642日には15.8等と順調に明るくなっており、また分光観測によって極大前のIa型超新星と判明しています。スペクトルの特徴も、現在の明るさからも、この超新星は典型的なIa型超新星よりもかなり暗いものであると思われ、今後の追跡観測が楽しみです。
もうひとつの超新星2011emは、前記の超新星2011ekに比べると数倍遠くにあるにもかかわらず、同じくらいの明るさで見えています。発見したのは、広島市の坪井正紀さんで、超新星2011ehに引き続く発見になります。
坪井さんは、8月4.533日に撮影した画像で、16.8等で輝く新天体に気付きました。天体の位置は、
赤経 13時27分13.19秒 赤緯 +55度29分17.4秒 (2000年分点)
で、棒渦巻銀河NGC 5164の中心から東に11秒角、北に3秒角にあたります。坪井さんの観測では、8.493日までの4日間で0.2等ほどの変動が報告されていますが、ほぼ極大に近いものと思われ、分光観測でも極大期のIa型超新星と判明しています。偶然とは言え、見かけの明るさは同じなのに、距離も正体も違うものが相次いで発見されたことになります。
今回の発見では分光観測も発見後早期に行なわれました。特に、暗めの超新星2011ekは、特異性と近距離であることから、くわしく調べられ、新しい知見が大いに得られるものと期待されます。
参考文献
- CBET 2783 (2011 Aug. 9)
- CBET 2785 (2011 Aug. 9)
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