さそり座V1309は近接連星系の合体か?

著者 :大島誠人(京大理)

 夜空に見える星の多くはお互いにまわり合うペアとなる星を持っていることが知られており、このような星のことを連星とよんでいます。一口に連星といってもその組み合わせや規模は多岐にわたり、望遠鏡でもペアを分離して見える系もあればスペクトル観測などによるより詳しい観測を行って初めて連星であることが分かる系もあります。

 さそり座V1309は2008年9月に福岡県の西山浩一さんと佐賀県の椛島冨士夫さんによって増光しているところを発見されました(VSOLJニュース199参照)。発見をうけて撮られたスペクトルには水素のバルマー輝線が見られるなど新星の特徴を示していたことから、いったんはこの天体は新星爆発によって明るくなった天体であろうと考えられました。しかし、その後のスペクトル変化が通常の新星とは大きく異なることが判明したため、一般的な新星とはやや異なった天体ではないかと考えられるようになりました。特に、この天体のスペクトルの変化が特殊な天体であるいっかくじゅう座V838とよく似ていることから、同種の天体ではないかと疑われるようになりました。いっかくじゅう座V838は2002年に明るくなった新星様天体ですが(VSOLJニュース077,084参照)、やはり通常の新星とは異なった機構によって増光したものと考えられています。

 このような天体は現在数個発見されており、その物理的な意味づけについては諸説が出されてきたもののまだはっきりしていません。仮説の一つとして、2つの星が合体することにより明るくなったのではないかという仮説があります。この度、さそり座V1309の観測によってこの仮説が正しいのではないかと思われる証拠が見つかったとする研究がコペルニクス大学のティレンダ氏らによって報告されました。

 重力レンズ天体を捜索するためのサーベイ計画として知られている計画に、OGLEがあります。この計画での捜索範囲にこの天体が含まれていたため、明るくなる以前も含め長年の観測データがとられていたのです。このデータを解析した結果、増光前のこの天体は周期が1.4日で変光を示しており、その変光の様子から周期1.4日の連星ではないかということが判明しました。これを受けたワルシャワ大学のステピエン氏は、合体前の星がどのようなものだったかについての研究を行い、合体前の系はK型の巨星どうしがほとんど接触してまわりあっていたのではないかと考えています。興味深いことに、この周期は観測が行われた数年間の間に減少していることがわかっており、このことから連星の周期が次第に短くなり、最終的に合体したのではないかということです。星の間隔が小さくなるにつれ角運動量が抜き取られていきますから、それがエネルギーとして開放されることで明るくなり2008年の増光につながったのだろうと考えられます。

 このような近接連星系の合体は、まだ充分に正体が明かされていないいくつかの天体で大きな役割を果たしている可能性が示唆されています。現在ではすっかり暗くなってしまっている天体ではありますが、このようなきわめて珍しい現象をとらえた可能性の高い現象を日本の新星ハンターの方によって発見されたということは、特筆すべきことだといえるでしょう。

参考文献: