今年は厳しい寒さの続く冬となっておりますが、そんな寒い冬の夜も更けるとともに春の星座が登ってきます。春の代表的な星座であるおおぐま座は多数の矮新星があることでも知られていますが、この度新たに一つの明るい矮新星がおおぐま座に発見されました。
スローンデジタルスカイサーベイはサーベイ観測の一環として分光観測をしており、それによって数多くの激変星と思われる天体を検出し、リストアップしています。これらの天体の中には、まだ増光がとらえられたことがない矮新星が多数含まれている可能性が高いため、多くの観測者がこのリストを元に新たな天体が増光が起こしていないかという日々のモニター観測を行っています。今回の新たな矮新星は、その中の一つで、普段は17.5等程度の星です。
発見者はJ・シアーズさん(イギリス)です。2011年2月7.919日(世界時)に、この天体が10.4等にまで増光しているところを眼視観測によってとらえました。この発見をうけて世界各地にの観測者によって確認され、増光間違いないことが判明しました。この天体は通常は17.5等前後ですから、増光幅は7等程度になります。これは激変星としてはかなり大きな値です。また、この天体が激変星であると疑われるようになってから一度も増光は発見されていないことなどから、増光がかなりまれな天体と考えられ、や座WZ型矮新星(VSOLJニュース No. 255等参照)の可能性もあります。精測位置は、
赤経 13時39分41.12秒 赤緯 +48度47分27.5秒 (2000年分点)
です。また、最近の観測は以下の通りです。
20100406.172 <165C (Eddy Muyllaert、ベルギー) 20100411.074 <172C (Eddy Muyllaert) 20100711.087 <172C (Eddy Muyllaert) 20110207.919 104 (Jeremy Shears、イギリス) 20110207.940 10.416V (Ian Miller、イギリス) 20110207.958 105 (Gary Poyner、イギリス) 20110208.017 101 (Patrick Schmeer) 20110208.017 101 (Patrick Schmeer、ドイツ) 20110208.035 104 (Gary Poyner) 20110208.919 103 (Eddy Muyllaert)
10等という明るさは矮新星、特に新しく発見される矮新星の中ではかなり明るい部類にはいるもので、小さな望遠鏡でもその増光している姿を見ることができます。おそらく数年に一度、あるいはそれ以下しかその姿を通常の望遠鏡で眺めることはできないでしょうから、この機会に一度その稀にしか目にすることのできない姿を眺めてみてはいかがでしょうか。
今回のような発見の元となった増光モニターは、その性質上ほとんどが「今日も見えなかった」の繰り返しの地味な観測です。しかし、そのような目立たない観測の積み重ねがこの度の新矮新星の発見につながったといえるでしょう。
参考文献
vsnet-alert 12807, 12816, 12817