当ニュースNo.253でヘルクレス座にある新矮新星のまれなアウトバーストが発見されたことについて報告しましたが、今度はうお座にある同様の新天体が増光しているところが発見されました。
発見したのは山形市の板垣公一さんです。2010年11月30.50663日に、21cm反射望遠鏡によるサーベイ観測の際に本来19-20等程度の星しかない位置に12.3等(CCDノーフィルター)の天体があることを発見し、60cm反射望遠鏡により確認・測定を行い報告がなされました。位置は、
赤経 01時20分59.59秒 赤緯 +32度55分45.0秒 (2000年分点)
です。うお座の一角に位置しており、所属星座は違いますがM33の近くでもあります。
増光幅が約8等前後であることなどから増光範囲の広い矮新星の可能性が疑われ、報告を受けた観測者の方により連続測光観測が行われました。イギリスのI・ミラーさん、花山天文台(京都市)の前原裕之さん、岡山理科大学チーム(岡山市)の皆様らによって早期スーパーハンプと呼ばれる変動が検出され、この天体が矮新星の中でも増光がまれで大きな増光を示すや座WZ型矮新星であろうということが判明しました。
矮新星は一般的に軌道周期が数時間という非常に短い近接連星系をなしていることが知られていますが、特に短い(2時間以下)ものはスーパーアウトバーストとよばれる長い増光の際にスーパーハンプとよばれる軌道周期よりわずかに長い変動を示し、おおぐま座SU型矮新星とよばれています。この中でも特に増光がまれで、増光範囲が大きなものがや座WZ型矮新星です。このや座WZ型矮新星はその増光初期に早期スーパーハンプと呼ばれる変動がしばしば見られることでも知られます。これは軌道周期より数%長い周期で変動する通常のスーパーハンプに対し、変動がダブルピーク状になっており軌道周期の半分で変動しているように見えることが特徴です。
や座WZ型矮新星は、増光がまれなこともあって見つかっている数もあまり多くなく、他の矮新星に比べても研究が遅れています。近年になって各種サーベイなどの成果もあって発見数も増えつつありますが、グループの中では明るいものの一つであるかみのけ座AL(VSOLJニュース No. 59)や、それどころか代表星であるや座WZ(VSOLJニュース No.67)でさえ、詳しい観測的研究は今世紀に入ってからという状態です。今回の天体は比較的明るく位置的にも観測しやすい、ということで多くの観測が望まれます。
参考文献
- vsnet-alert 12431, 12435, 12436, 12441