楕円銀河に増光中の超新星

著者 :山岡均(九大理)

VSOLJニュース(243)でお知らせした天体(2010dn)は、超新星ではなく明るい青色変光星(LBV)と判明しましたが、その巻き返しとばかり、山形県山形市の板垣公一(いたがき こういち)さんは、別の新天体を発見されました。今回の天体は、増光中の超新星である可能性が高いと思われます。

板垣さんは、6月3.71日(世界時、以下同様)に60cm望遠鏡で撮影した画像に、17.3等級の新しい光点を見いだしました。以前撮影した画像を点検したところ、5月31.748日に撮影したときにも18.0等で捉えられていることが判明しましたが、それ以前の画像には天体はありませんでした。新天体の位置は、

赤経   0時15分29.70秒
赤緯 +17度19分41.0秒 (2000年分点)

で、うお座とペガスス座の境界付近にある楕円銀河NGC 57の中心核から西に17秒角、南に1秒角にあたります。

楕円銀河では星生成活動は現在不活発です。そのため、寿命の短い大質量の星は死に絶えてしまっており、大質量星起源である「重力崩壊型超新星」はまず出現しません。一方、白色矮星の核爆発とされる「核爆発型超新星」は、銀河の型を問わずに出現します。今回の天体は、増光中の核爆発型超新星と考えて明るさ等が矛盾しません。今後、分光観測によるタイプの判別や、光度変化の追跡が注目されます。

板垣さんによる発見画像:http://www.k-itagaki.jp/images/psn57.jpg

参考文献:

2010年6月4日

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