夜空を眺めると、点のように見える星とは別に、ぼうっと広がった天体を見つけることができます。その正体は尾をひきながら星の間を移動していく彗星であったり、星雲や星団、銀河であったりと様々です。今から200年ほど前、フランスの彗星捜索家であったシャルル・メシエは、効率よく新たな彗星を発見するために、彗星とまぎらわしい星雲、星団、銀河のカタログを作成しました。こうしてまとめられた天体はメシエ天体と呼ばれており、メシエの頭文字Mに数字をつけて表記します(例えば、M1のように)。
山形市にお住まいの板垣公一(いたがきこういち)さんは、一週間前に超新星2008ijを発見されたばかりですが(VSOLJニュース 207)、今度は12月26.79日(世界時、以下同様)に撮影したおとめ座の渦巻銀河M61のCCD画像から、14.9等の明るさで超新星2008inを発見されました。翌27.695日にも板垣さんは同じ明るさでこの超新星を観測しています。超新星の位置は、
赤経: 12時22分 1.77秒 赤緯:+ 4度28分47.5秒 (2000年分点)
で、M61の中心核から東に102秒角、北に22秒角のところにあたります。
M61には2年前にも超新星2006ovが出現しています。この超新星も板垣さんが発見したものでした。107個のメシエ天体のうち、銀河は39個しか含まれておらず、ひとつの銀河に超新星が出現する割合は数十年に1個ほどであることから、今回のように1つのメシエ天体に短期間に複数の超新星が現れ、さらに発見者が同一人物であるというのは稀なことです。板垣さんの熱心な捜索活動によるものといえるでしょう。なお、M61では、20世紀の間に超新星1926A、超新星1961I、超新星1964F、超新星1999gnの4個が発見されています。比較的超新星の発生率が高い銀河と言えるでしょう(VSOLJニュース 30)。
昨年は年末年始にかけて日本人による多くの新天体発見のニュースがありましたが、この調子だと今年も多くの発見が期待される楽しみな年末年始になりそうです。
参考文献:
- CBET 1636 (2008 Dec. 29)
2008年12月29日