日本には、口径60cmや1mクラスの望遠鏡で市民が天体を観察できる公開天文台が数多くあります。これは世界的に見ても珍しいものです。市民の観望会のかたわら、これらの望遠鏡で天文学の研究を推進している天文台も数多くあります。その研究プロジェクトのひとつが、超新星探しのSNOWプロジェクトです。
SNOWプロジェクトは、少し遠くにある銀河が集まっているところ(銀河団)の中心部を撮影して、そこに出現する超新星を見つけようというものです。もっと近くの銀河だと、ひとつの視野にひとつの銀河しか写りませんが、銀河団中心部を狙うと、一度にたくさんの銀河を見ることができます。ただし、多少遠いため暗く、口径が大きめの望遠鏡で光をたくさん集める必要があります。公開天文台の望遠鏡は、このプロジェクトにぴったりの大きさなのです。
1990年代後半に始まったこのプロジェクトですが、予算的・人員的な制約からなかなか観測もままならず、これまでは超新星発見に至りませんでした。しかし去年、SNOWプロジェクトから発展した西はりま天文台「@サイト」プロジェクトで超新星2007igが発見されました(VSOLJニュース180)。そして今回、SNOWプロジェクトの計画に沿った形で、初めての超新星発見となったのです。プロジェクトを主導したひとりである、東京大学大学院准教授の茂山俊和(しげやまとしかず)さんは、「粘り強い観測に感服する」と語っています。
愛媛県の山間部、久万高原町にある久万高原天体観測館の藤田康英(ふじたやすひで)さんは、館の60cm望遠鏡を用いて1月14.499日(世界時、以下同様)に撮影した画像で、18.7等級の新しい光点に気付きました。16.619日には確認観測に成功し、そのときには天体は17.8等と明るくなっていました。超新星2008Lと名付けられたこの天体の位置は、
赤経: 3時17分16.65秒 赤緯:+41度22分57.6秒 (2000年分点)
で、母銀河であるNGC 1259の中心から西に6秒角、南に10秒角ほどのところにあたります。この銀河は、私たちから2億5千万光年ほどの距離にある、ペルセウス座銀河団に属しているもので、核爆発型の超新星であれば、16等程度まで明るくなる可能性があります。今後のタイプ判別や光度追跡が面白そうです。
藤田さんは、子持ち銀河M51の超新星1994Iを独立発見された経験のある方で、SNOWプロジェクトの公式ホームページを構築するなど、プロジェクトの中心的なメンバーとして活動されており、今後の活躍が期待されます。また、他の天文台のSNOWプロジェクトへの新参加もお待ちしております。藤田さん、山岡(この記事の筆者)までご連絡をいただければ相談に乗らせていただきます。
参考文献:
- CBET 1212 (Jan. 17)
- SNOWプロジェクト公式ホームページ
- 久万高原天体観測館
2008年1月18日