【転載】VSOLJニュース(032)

近傍銀河NGC 6951に2個の超新星が同時に見えている


著者 :山岡均(九大理)
連絡先:yamaoka@rc.kyushu-u.ac.jp

数年前まで、2個の超新星が同時に見えた例は稀で、半年以内に2個が発見されたのは、1990年以前ではわずかに2例だけでした。しかし、1990年以降このような例が急に増え、1990年代の10年間で5例も報告されています。このうち最後の2つはvsolj-news 005と026でご紹介しましたが、今年また同様の例が発見報告されました。しかも、この銀河はかなり近傍のもので、前に発見されている超新星1999elについてもvsolj-news 023でご紹介しています。今回の明るい超新星2つの競演は、NGC 1316で1980-81年に見られたもの以来20年ぶりの明るさと言えるでしょう。

IAUC 7351によると、今回の超新星2000Eは、イタリアのRome天文台で1月26.73日(世界時)に発見されました。発見時ころの明るさはV等級が14.30等、B等級が15.78等とかなり赤い天体です。位置は、赤経20時37分13.8秒、赤緯+66度05分50.2秒(2000年分点)、銀河の中心から西に6秒、南に27秒ほどと報告されています。また、超新星1999elからは西に28秒、南に24秒ほどです。この位置とオフセットの間には、特に東西方向に数秒ほどの矛盾があるのですが、超新星の同定には問題ない程度です。母銀河の周りには、手前の星がたくさん見られますが、銀河の南側には比較的少ないようです。超新星1999elを写した画像が多数ネットワーク上で得られますので、超新星の同定の参考になるでしょう。(例えばhttp://www.jate.u-szeged.hu/~klaci/sn99el_12.jpg)

母銀河は、中央部の棒構造があるかないかはっきりしない渦巻型(SABbc)で、超新星2000Eの出現位置は、東から南を通って北西に伸びる内側の腕の、中心核に近い南側の部分に重なっています。

超新星のスペクトルも観測され、極大前のIa型超新星であろうと報告されています。また、星間物質による吸収があることも言われています。これは、超新星が赤く観測されていることと合致します。この銀河は銀河面に近く(銀緯15.5度)、私たちの銀河系内での星間吸収がVバンドで1等程度あると推測され、また母銀河内での吸収もあるようです。母銀河の後退速度(私たちの銀河回転を補正した)が1700 km/sほどで、吸収を受けない典型的なIa型超新星なら極大等級が13等程度になると期待されるのですが、吸収のためにV等級では14等程度以下ではないかと予測されます。しかし、波長の長い光は吸収を受けにくいため、CCD撮影などではもう少し明るく見えると思われます。一方、超新星1999elのほうは昨年12月31日に16.4等と報告されており(IAUC 7344)、現在も16等台であろうと思われます。ただし、この超新星のごく近く(数秒ほどのところ)にはおよそ17.3等と18.6等の2つの前景の星があり、超新星はこの中間にあります。超新星をそれらの星と分離するのはやや難しいかもしれません。(http://www.kusastro.kyoto-u.ac.jp/vsnet/Mail/alert3000/msg3622.html)

夕方の北西低い、もしくは明け方の北東低い天体ですが、次にいつ起きるかわからないことでもあり、珍しく明るい2つの超新星をとらえるのは興味深いでしょう。もちろん、遠い銀河の距離測定の標準とされているIa型超新星の性質を解明するため、明るさをモニターし、光度変化を調べることも重要です。

[参考]
半年以内に2個の超新星が発見された例:
NGC 2276	SNe 1968V and 1968W
NGC 1316	SNe 1980N and 1981D
MGC+10-24-07    SNe 1992R and 1992ac
NGC 664         SNe 1996bw and 1997W
無名銀河	SNe 1997dl and 1997dk
NGC 6754	SNe 1998X and 1998dq
IC 5179		SNe 1999ee and 1999ex
NGC 6951	SNe 1999el and 2000E

2000年1月28日

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転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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