【転載】VSOLJニュース(026)
VSOLJニュース(005)や(009)で、ひとつの銀河に複数の超新星が出現した例についてご紹介してきました。超新星の出現率は、ひとつの銀河に100年あたり1個か2個ほどと考えられており、同じ銀河に1年に2個の超新星が見られるというのはごく稀なことでした。ところが、最近は超新星の捜索が活発になってきたためと思われますが、このような例が急に増えてきました。今回ご紹介するのは、今現在2つの超新星が同時に見えている銀河です。
10月7日(世界時、以下同じ)にチリ大学のグループが、つる座とみなみのうお座の境界付近にある渦巻銀河IC 5179に超新星を発見しました。この超新星はSN 1999eeと名付けられています。この超新星はIa型で、10月13日に14.7等と観測されて以来報告があまりないのですが、10月15日頃に14.5等ほどの極大となったと推定され、11月中旬現在では15等台後半の明るさだろうと思われます。一方、オーストラリアのパース天文台のグループは、11月9日に別の光点が現われていることに気づきました。SN 1999exと名付けられたこの超新星は、M51に出現したSN 1994Iと同じIc型とされています。11月にこの銀河を何度も撮影していたグループによって、極大は11月13日で、その時の明るさはV等級で16.6等であったと報告があります。現在でも17等程度では見えていることでしょう。
複数の超新星が観測されたことがある銀河は、(私たちの銀河系を除いて)これまでに75例あります。このうち、カレンダー上の1年間に、ひとつの銀河に複数の超新星が観測されたのは、1921年のNGC 3184、1968年のNGC 2276、1992年のMGC+10-24-07、1997年の無名の銀河(同時に2つ超新星が発見された)、1998年のNGC 6754(VSOLJ-news 005参照)に次いで今回が6回目です。1990年代に入ってからの急増ぶりがわかります。また、カレンダーでは翌年にまたがるけれど発見の間隔が1年以内なものは、NGC 1316(1980-81)、NGC 664(1996-97)、NGC 3690(1992-93, 1998-99, VSOLJ-news 009参照)が挙げられます。
今回の現象は、日本からはかなり南に低く、観測は難しいですが、CCD撮影などでとらえてみると面白いでしょう。
[参考情報]
1999年11月17日
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