【転載】VSOLJニュース(009)
超新星にはいくつかのメカニズムがあると考えられています。その中には、太陽の8倍以上の質量の星が、進化の最終段階で中心核が重力崩壊して爆発するタイプのものがあります。このような大質量の星は寿命が1億年程度以下と短いため、このタイプの超新星は、天文学的な意味ではつい最近星が生まれたような場所でしか見られません。
星が誕生するのは、渦巻を持つ銀河の腕の部分や、銀河衝突などで銀河内のガスが乱されているような場所です。したがって、その種の銀河には、他の銀河よりもたくさん超新星が出現すると思われます。私たちの銀河系では、1604年以来超新星が観測された例はなく、超新星の出現は通常ひとつの銀河あたり100年に1個程度ではないかと考えられていますが、このような銀河ではもっと数が多くなります。
1月16日に超新星1999Dが発見された銀河NGC3690は、まさにそのような銀河です。おおぐま座の、北斗のひしゃくの中にあるこの天体は、複数の銀河が衝突している最中で、その内部には大質量星を多く含むと思われる星団がたくさん存在しています。実は、この銀河には昨年も超新星1998Tが出現しました。さらに遡ると、1993年、1992年にも超新星が観測されています。また、1990年には、この銀河内の超新星からと見られる電波が受かっています。最後のものも合わせると、この10年間でなんと合計5個の超新星ということになります。これらはいずれも大質量星起源の超新星と考えられています。1999Dは、現在15-16等級ほどの明るさで輝いています。
超新星が多い銀河としては、開いた渦巻を持つはくちょう座の銀河NGC6946が有名で、1917年から1980年までに6個の超新星が発見されてきました。今回のNGC3690は、それをはるかに上回るハイペースです。
超新星の出現率は、統計が不完全なこともあってまだ正確にはわかっていません。さまざまな銀河での超新星出現率を求める試みが続けられていますが、今回のNGC3690のような銀河では、これまで考えられた以上に超新星が出現しているのかも知れません。
1999年1月19日
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