天体衝突によって気象異変が起きることは、かなり以前から指摘されてきましたが、紀元(=西暦)536年から約10年に渡って起きた地球全体の寒冷化が、彗星の衝突によるものだとの新説が登場しました。
木の年輪を調べると、その成長速度の差が分ります。その差は主に気温に依存しています。536年からの10年間は気温が低下したことが、世界各地の年輪測定からわかっています。しかも、平均で3度も下がったといわれているほどで、536年は、この2000年の間で最も気温の低い年だったようです。
また、古記録によれば、この時期には空の透明度も悪く、地中海では「乾いた霧」が立ちこめ、太陽が月のように輝きを弱めたとの記述もあります。
これらの気象異変は、大規模な森林火災ではないか、あるいは大規模な火山の噴火によるものではないか、といわれてきました。それは、天体衝突の場合に生じる隕石孔が見つかっていないからです。
しかし、イギリス・カーディフ大学のリグバイ(E. Rigby)らは、この現象がクレーターを作らないような小粒の彗星の衝突によって説明できるという研究結果を発表しました。小さな天体だと、地上に達する前に、上空で大爆発を起こします。すると、エアーバーストという強烈な爆風が衝突地点付近を襲って、かなりの面積を焼き払います。その代わりにクレーターはできません。年輪を調べると、どうやらその衝突地点はヨーロッパ北部であったようです。同時に、その爆風と共に彗星に含まれている塵などが大きなきのこ雲となって大気圏を越えて広がります。これらは冷えると再び地球に落下しますから、塵が地球全体を覆ってしまい、太陽光線を遮断する役目をして、地球が冷えてしまうわけです。
1908年にロシア・シベリアのツングースで起きた現象も、同じように小さな天体だったため、クレーターは作らず、上空で大爆発を起こしました。爆風によって、地上のかなりの面積が焼けこげ、同時に数日間にわたって夜が明るかったといいます。これは大気の上層に塵がばらまかれたせいだといわれています。
リグバイらの計算によれば、衝突してきた彗星の大きさは半径300メートル程度で、彗星としてはかなり小粒です。実はこのころ、おうし座流星群の母天体である大きな彗星が分裂したという研究結果もあります。その分裂破片のひとつが地球に衝突したのかもしれない、とも述べています。
いずれにしろ、 紀元536年に何が起きたのか、今後もさらに研究が続くことでしょう。
2004年2月19日 国立天文台・広報普及室
訂正:「国立天文台・天文ニュース (700) M78星雲のそばに新星雲が出現」で、「佐野やすお」さんのお名前が間違っておりました。誤「康夫」」、正「康男」でした。佐野さんには大変失礼いたしまいた。ここに訂正させていただきます。
4次元デジタル宇宙プロジェクト [タイトル未定]の一般公開についてのご案内 事前申し込み制:往復はがきでお申し込みください 公開日時:2004年 3月27日(土) 16:00〜18:00 受付時間:15:30〜17:30 受付場所:管理棟ロビー 上映時間:約20分 (各回定員20名 総入替制) チケット:返信はがきと引替に受付で上映回指定チケットを配布 申し込み:往復はがきでお申し込みください (詳細は下記URL参照) 締切:2003年 3月15日(月)(必着) 定員:150名予定 (定員を越えた場合は抽選) 参加費:無料 問合先:国立天文台広報普及室 電話0422-34-3688 (平日午前9時〜午後6時) 注:締切後、応募頂いた往復はがきの返信欄にて参加の可否をご連絡し ます。お電話等での参加可否についてのお問合せにはお答え致し兼 ねますのでご了承ください。 詳細参照:4次元宇宙プロジェクト http://th.nao.ac.jp/~4d2u/ 2004年 3月27日公開 http://th.nao.ac.jp/~4d2u/4D2U/publicity8.html