【転載】国立天文台・天文ニュース(426)

ESOがVLTの干渉実験に成功


 ヨーロッパ南天天文台(ESO)が、南米チリのセロ・パラナル山頂に建設したVLT(Very Large Telescope)の干渉計で、恒星の光による干渉実験に初めて成功しました。

 VLTはセロ・パラナル山にある口径8.2メートルの望遠鏡4基の総称です。これだけ接近したところに大望遠鏡を4基も作ったのは、ひとつにはこれらの望遠鏡の光をすべて集めて、実質口径16.4メートルの望遠鏡として動作させようという意味があります。それだけでなく、もうひとつ、これらを光学干渉計として使う目的もあるのです。これらの望遠鏡を干渉計にすると、口径130メートルの望遠鏡に相当する分解能をもつといわれます。しかし、二つの望遠鏡で別々受けた光を干渉させるためには、光の位相を合わせる高度の技術が必要で、簡単にできることではありません(天文ニュース179,375参照)。

 しかし、この困難を乗り越えて、ESOは、この3月17日夜の観測で、恒星の光によるVLT干渉計(VLT Interferometer;VLTI)の実験に初めて成功したこと、つまりVLTIのファースト・ライトを発表したのです。

 実をいうと、この実験は8.2メートル望遠鏡を使ったものではありませんでした。この目的で特別に作られたシデロスタットと呼ばれる口径40センチの望遠鏡二つでシリウスの赤外光を受け、それらを地下の干渉室に導いて干渉させ、その干渉縞を出すことに成功したのです。これは光の位相を合わせるために使ったデレイラインが期待通り動作したことを意味します。それだけでなく、翌日の晩には、「うみへび座アルファ星(アルファード)」からの光を2分間にわたって干渉させ、その結果からこの星の角直径が0.00929秒であることを求めることにも成功しました。この角は、車の二つのヘッドライトを3500キロメートル離れたところで見る角距離に相当します。この成功でESOは大いに自信を深めた模様です。

 なお、ESOは、8.2メートル鏡による干渉実験を今年後半に実施し、2002年には干渉計による定常的な科学観測を始める予定といわれます。さらにこの干渉計によって、系外惑星の直接検出、太陽以外の恒星での表面模様の観測、質量交換をしている近接連星の観測、惑星状星雲と白色わい星の進化の観測、その他さまざまな野心的な観測をする目標が掲げられています。この方面から、天文学の新しい進展が期待できるのかもしれません。

参照

2001年3月22日 国立天文台・広報普及室


転載: ふくはら なおひと(福原直人) [自己紹介]

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