【転載】国立天文台・天文ニュース(422)
天文ニュース368(2000年8月10日)で、「星の名は誰がつけるのか」という話題を提供しました。星に名を付けることについて、国際天文学連合(IAU)が声明を出しています。英文ですが、IAUのホームページで見ることができます。以下にざっとした訳文を紹介します。
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「お金を払って星に名を付けたい」、「誰か特定の人にちなんだ名を星に付けたい」という要望をIAUはしばしば受けている。有料でその種のあっせんをすると称している企業もある。しかし、そうした手順で付けられた星の名は、正式なものではなく、公式には何の効力もない。いくつかの明るい星は昔から伝わるアラビア語の名をもっているが、その他の多くの星は、星表の番号と天球上の位置によって示されるだけである。有料で星団や銀河に名を付けることに対しても、同様の決まりが適用される。一方、太陽系内の天体の命名には特別の手続きが定められているが、そこに、商業的な取り扱いはまったく含まれていない。
国際的科学組織としてIAUは、偽りの星の名を「販売」することや、太陽系の惑星や衛星の上の「不動産」を商業的に取引きすることには、まったく関係していない。したがってIAUは、世界のどの国に対しても、この種の企業のリストを持ってはいない。上記の説明にもかかわらずこの種の企業に接触しようとする人は、それぞれの国で商業上の名簿を探してほしい。
この種の企業の中には、過去に、顧客に対して、この事業にはIAUが関係している、あるいはIAUが承認している、賛成している、積極的に協力しているなどとほのめかしているところもあった。これらの主張は明白に誤りであり、根拠がない。その事実をIAUは完全にはっきりさせたいと願っている。もしIAUの名を不正に悪用している場合があったら、どんな場合でも、それを適当な文書でIAUに報告してほしい。その種の報告に感謝するとともに、証拠のある事例に対しては、IAUはあらゆる手段でそれらの事例を追求し、対決するつもりである。
夜空の美しさは、真実の愛、その他人生でもっとも価値のある多くのものと同様に、代金を払って手に入れるものではなく、すべての人が無料で享受すべきものである。確かにある星を贈り物にすることは、その人の目を夜空の美しさに気付かせることになるかもしれない。それは価値のあることである。しかし、その事実が、他の商品のように星の名も買うことができると信じさせ、人々をだますことを正当化するものではない。誤解を招くような宣伝をしているけれど、国内でも、国際的にも、いくつかの企業は、その種の事業を争って進めている。われわれの銀河系には、惑星をもつ星が何百万個もあるかもしれない。われわれが太陽と名付けたように(言語が違えばそれぞれ異なった呼び方をするのは当然であるが)、これらの惑星の住民は、そのそれぞれの星を名付けるのに、われわれと同等の、あるいはわれわれ以上の権利を持っているはずである。
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この文章に続けて、非公式な形ですが、星の命名について、あるいは惑星や衛星上の不動産取引について、法律の専門家と質疑応答をする型式で、15の問題が扱われています。しかしその部分は省略しました。このホームページからは、天体を命名する手順や、それについてのさまざまな決まりなどをたどって行くことができます。星の命名に関して興味をもつ方には参考になるでしょう。
2001年3月8日 国立天文台・広報普及室