【転載】国立天文台・天文ニュース(344)
長野県佐久町の高見沢今朝雄(たかみざわけさお)さんは、4月29日未明(日本時)に撮影したフィルムから、「わし座」に10等級の新星らしき天体を発見、同日夜に国際天文学連合に通知するとともに、変光星観測者のグループに報告をしました。発見位置は、1917年に撮影されたハイデルベルグ天文台の写真から後年ラインムート(Reinmuth, K.)が発見した新星「わし座CI」のごく近くであったため、この新星の再爆発が想定されました。
一方、愛知県岡崎市の山本稔(やまもとみのる)さんも、4月29日未明に撮影した写真から「わし座CI」と思われる天体が9.8等に増光していることに気付き、これは京都大学の加藤太一(かとうたいち)さんによって国際天文学連合に通知されました。
このとき加藤さんは、京都大学の植村誠(うえむらまこと)さんとともに、国立天文台岡山天体物理学観測所で他の天体のスペクトル観測をおこなっている最中でした。ただちに彼らは1.88m望遠鏡でこの新星のスペクトルを観測し、そこに新星特有の強く広い水素の輝線があることを確認しました。
また、茨城県つくば市の清田誠一郎(きよたせいいちろう)さん、美星天文台の綾仁一哉(あやにかずや)さん、岡山県岡山市の白神憲一(しらかみけんいち)さんなどが撮影した画像から、九州大学の山岡均(やまおかひとし)さんは、この新星の位置を、
赤経 18時 52分 3.55秒 赤緯 - 1゜ 28' 38.9" (2000.0)
と測定しました。この位置は「わし座CI」と完全に一致しましたから、今回検出した新星は、「わし座CI」が1917年以来83年ぶりに再増光したものとわかりました。
新星は、回り合う連星の一方に相手の星からガスが降りつもり、星の表面で爆発するものです。したがって、どの新星もいつかは再爆発すると考えられます。しかし爆発の間隔は星によって異なり、10年程度の短いものから、数万年以上かかるものまでいろいろあると考えられます。2回以上の増光が確認された新星(反復新星)はこれまで7個しか発見されておらず、この「わし座CI」が8個目となります。
高見澤さん、山本さんは、これまでに数多くの新天体を発見され、ともに昨年度の日本天文学会の天体発見賞を受賞されたベテラン観測者です。
参照
2000年5月2日 国立天文台・広報普及室
注:この天文ニュース(344)の原文は、九州大学の山岡均さんが作成、国立天文台・広報普及室でわずかに補訂をしたものです。