山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、12月4日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.5等の超新星を発見しました。この超新星は、しし座方向にある NGC 3389 銀河の中にあり、板垣さんご自身所有の口径60センチメートル反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測 (限界等級19.0等) により撮影された多数の画像の中から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2009md」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り。
発見日時 2009年12月4.81日 = 12月4日19時26分 (世界時) 赤経 10時 48分 26.28秒 赤緯 +12度 32分 02.8秒 (2000年分点) 発見等級 16.5等
板垣さんの観測によると、この超新星は NGC 3389 銀河の中心から西に24秒角、北に3秒角離れた位置にあります。
板垣さんは、今年11月7日にもこの場所を観測していましたが、その画像 (限界等級18.0等) には、この天体は写っていませんでした。また、2001年3月21日の観測 (限界等級18.5等) 以来、板垣さんがこの場所を観測して得られた多くの過去の観測画像や、DSS (注) の画像にもこの天体は写っていませんでした。
中野さんは、宮城県大崎市の遊佐徹 (ゆさとおる) さんが、12月5日にアメリカのニューメキシコ州にある口径25センチメートルの反射望遠鏡 (f/3.4) を遠隔操作して撮影したCCD画像 (限界等級18.0等) の中に、16.7等のこの天体を確認したことを報告しています。また、埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんも、同日25センチメートル反射望遠鏡 (f/5) を用いて撮影したCCD画像 (限界等級19.2等) の中に、16.8等のこの天体を確認しています。
なお、この銀河には1967年2月に13等の超新星「1967C」が出現しています。
板垣さんによる超新星の発見は、11月6日の2009krに続き、今年に入って10個目です。今回の発見を含めた超新星の通算発見数は54個 (独立発見を含む) となり、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。
また板垣さんは、11月25日にエリダヌス座に新星を発見したばかりです。板垣さんのさらなる活躍に期待します。
注:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
2009年12月8日 国立天文台・広報室