ALMA (アルマ) 計画、日本のアンテナが山頂へ一番乗り

 ALMA (アルマ:アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計) は、アンテナ66台以上を組み合わせて、ミリ波サブミリ波を観測する望遠鏡で、東アジア、ヨーロッパ、北米、チリ共和国が協力して、チリのアンデス山脈で建設を進めています。2009年9月18日 (日本時間)、初めて、アンテナが標高2,900メートルの山麓施設から標高5,000メートルの山頂施設に移動しました。記念すべき、最初の山頂到着を果たしたのは、日本が製作したアンテナです。最先端技術を結集したALMAのアンテナは、重量は約100トン、電波受信部の直径は12メートルあり、強風に耐え、摂氏マイナス20度からプラス20度までの広い温度範囲で性能を保ち、稼働することができるように造られています。

 ALMA望遠鏡が建設される山頂は非常に乾燥しており、ミリ波からサブミリ波の観測には理想的な気象条件の場所です。一方、酸素量は、海抜0メートルの場所と比べてわずか2分の1程度で、人間が山頂で装置の組み立てや性能試験などを行うことは極めて困難です。このため、アンテナの組み立てや試験は、標高2,900メートルの山麓施設で行われています。山麓施設では、アンテナ単体での試験 () の他、国立天文台アストロ・トピックス (474) でもお伝えした複数台のアンテナを組み合わせて干渉計として動作するかどうかの試験も行われるなど、広範な性能評価が行われました。性能が確認されたアンテナの次のステップは、実際に観測が行われる山頂で性能を確認することです。移動当日、アンテナは、専用移動台車によって山麓施設から山頂施設までの約28キロメートルの道のりを運ばれました。今回は初めての山頂へのアンテナ移動であるため、約7時間かけてゆっくりと移動しました。

 「ついに本日、日本のアンテナがアルマで初めて標高5,000メートルの山頂施設へ移動されました。アルマは国際プロジェクトのため、文化や言語の違いによる様々な困難もありました。しかしながら、チリ現地で働く合同アルマ観測所のスタッフ、これまで必死にアンテナを評価してきた国立天文台スタッフ、そして、アンテナの技術を支えた日本のアンテナメーカーが協力することで、ここまで来ることができました」と東アジアのALMAプロジェクトマネジャー井口聖 (いぐちさとる) 国立天文台准教授は、喜びのコメントを寄せています。

 間もなく2台目以降のアンテナも、順次、山頂施設に到着する予定です。そして、2012年から本格科学運用を開始する予定です。

ALMA (アルマ) 計画の進捗について−組み上げ調整・試験においてアンテナの性能を確認−

参照:

2009年9月30日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)