山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、6月15日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.1等の超新星を発見しました。この超新星は、うしかい座方向にある NGC 5525 銀河の中にあり、板垣さんご自身所有の口径60センチメートル反射望遠鏡 (f/5.7) を用いたCCD観測 (限界等級19.0等) により撮影された8枚の画像から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2009gf」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り。
発見日時 2009年6月15.607日 = 6月15日14時34分 (世界時) 赤経 14時 15分 37.11秒 赤緯 +14度 16分 48.6秒 (2000年分点) 発見等級 16.1等
この超新星は NGC 5525 銀河の中心から西に31秒角、南に8.5秒角離れた位置にあります。
なお板垣さんは、発見前の6月9.624日にもこの場所を撮影しており、この超新星が17.7等で写っていたことを確認しています。
また板垣さんは、6月1.591日に観測して得た画像 (限界等級は18.5等) を含め、それ以前にもこの場所の観測を行い多くの画像 (限界等級は19.0等) を得ていましたが、これらの画像にはこの天体は写っていませんでした。またDSS (注1) の画像にも、この天体は写っていませんでした。
なお「NORDFORSK/Nordic-Baltic astronomy summer school」に参加中の学生を中心とするグループは、発見直後の6月15.9日にこの天体の低分散分光観測を行い、得られたスペクトルからこの天体が極大光度に達する数日前のIa型超新星 (注2) であることが示唆されると報告しています。
板垣さんは、6月に入り3週連続で超新星を発見しています。板垣さんによる超新星発見は、今年に入って5個目で、また今回の発見を含めた超新星の通算発見数は49個 (独立発見を含む) となりました。日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。
注:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
注2:超新星とは星が大爆発を起こして通常の数億倍から数百億倍の明るさで輝く現象をいう。大きく分けて2つの種類が知られており、白色矮星がなんらかの理由で限界質量を超えて爆発するものと、太陽よりもずっと重い星が一生の最期に重力崩壊を起こして爆発するものがある。スペクトルの特徴から、前者はIa型、後者はIb型、Ic型、II型と観測的に分類されている。
2009年6月17日 国立天文台・広報室