福岡県久留米市の西山浩一 (にしやまこういち) さんと、佐賀県みやき町の椛島冨士夫 (かばしまふじお) さんが、4月21日 (世界時、以下同じ) 等の観測から、いて座に新星らしき天体を発見しました。
この天体は、4月21.681日に焦点距離105ミリメートルのカメラレンズを使用したCCD観測によって12.5等の明るさで発見されましたが、USNO-B1.0 (注1) カタログによると発見位置の近くには暗い星が存在したことや、発見直前の4月18.705日の観測では13.5等よりも暗かったことから、当初は変光星が増光したものではないかと推測されました。しかし、県立ぐんま天文台 (群馬県高山村)の衣笠健三 (きぬがさけんぞう) さんらのグループが、同天文台の1.5メートル反射望遠鏡を用いて、4月27日に低分散および高分散分光観測を行ったところ、観測から得られたスペクトルは、極大期を過ぎた古典的新星 (注2) の特徴を示しました。この観測結果から、新星であることが確認されたものです。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通りです。
発見日時 2009年4月21.681日 = 4月21日16時21分 (世界時) 赤経 17時 44分 08.44秒 赤緯 -26度 05分 48.7秒 (2000年分点) 等級 12.5等
なお位置は、4月28日にぐんま天文台によって観測された値です。この位置は、当初増光したと考えられた USNO-B1.0 カタログの星とは約1.4秒角離れており、今回の新星はこの星とは別の天体である可能性もあります。
また西山さんと椛島さんは、この新星の等級を4月21.711日および22.720日に11.7等、23.760日に12.3等、25.683日に12.2等、27.815日に12.4等で観測しています。
西山さんと椛島さんによる新星発見は、昨年9月のさそり座新星以来で、通算6個目となりました (注3)。お二人のさらなる活躍を期待します。
注1:USNO-B1.0 は米国海軍天文台 (United States Naval Observatory) によって作成された天体カタログのひとつ。全天域の約10億個の恒星および銀河についての位置、等級のほか、恒星については固有運動も記載されている。限界等級の値は天域によって変わるが約21等である。
注2:恒星の性質は、分光観測で得られたスペクトル線の振る舞いから知ることができる。新星の場合、そのスペクトル線で水素のバルマー線に強い輝線がみられるものを古典的新星と呼んでいる。
注3:このほかに、M31銀河等の天の川銀河外の新星も多数発見している。
2009年5月8日 国立天文台・広報室