板垣さん、新彗星を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんは、3月14日 (世界時、以下同じ) の観測から、くじら座の方向に、コマの直径が70秒角、明るさが12.8等の彗星を発見しました。

 この彗星は、栃木県高根沢町の観測所にある口径21センチメートルの反射望遠鏡 (f/3、視野角2.2度) を用いたCCD観測より得られた複数枚の画像から、北海道札幌市の金田宏 (かねだひろし) さんが開発した、移動天体を自動的に検出するソフトウェアを利用して発見されました。

 この発見は、九州大学の山岡均 (やまおかひとし) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、「C/2009 E1」という認識符号が与えられました。また通称名は、板垣 (Itagaki) 彗星となりました。

 この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り (注)。

発見日時 2009年3月14.41509日 = 3月14日9時58分 (世界時)
赤経 2時 48分 07.10秒
赤緯 +8度 23分 31.0秒 (2000年分点)
発見等級 12.8等

 発見時刻については、中野主一 (なかのしゅいち) さんによって修正報告されました。また中野さんは、3月14.424日の彗星画像から全光度を11.9等と測定し、彗星のコマには弱い中央集光があり、南方向に尾があるようだと付け加えています。

 また、埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんは3月15.41日にご自身が所有する口径25センチメートル反射望遠鏡 (f/5) を用いて撮影した画像から、彗星のコマの直径が3.8分角、全光度は10.8等、中央集光が強く、尾は見られないと報告しています。

 この彗星は、3月中は夕方の低空に約10等級の明るさで見られそうです。4月に入ると見かけの方向が太陽に近くなるため、観測が難しくなります。

 発見者の板垣さんはベテランのアマチュア天文家で、これまで多くの超新星を発見しています。また昨年9月には、一世紀にわたって行方不明となっていたジャコビニ彗星 (P/2008 R6 = D/1896 R2) の再発見をしていますが、新彗星の発見は今回が初めてとなりました。

 発見者自身の観測による新彗星発見で、彗星に日本人の通称名がついたものとしては、2002年12月に発見された工藤・藤川彗星につぐ久々の快挙です。

:発見時刻は、板垣さんが撮影した観測のうち、中野さんが時刻を補正した最初のもの。また位置の測定は、金田さんによる。

参照:

2009年3月17日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)