神奈川県茅ヶ崎市の広瀬洋治 (ひろせようじ) さんは、12月15日 (世界時、以下同じ) の観測から、16.9等の超新星を発見しました。この超新星は、くじら座方向の NGC 1070 銀河の中にあり、口径35センチメートルのシュミット・カセグレン式反射望遠鏡 (f/6.8) を用いたCCD観測 (限界等級17.5等) により撮影された14枚の画像から発見されました。
この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、この超新星は「2008ie」と命名されました。
この天体の発見日時、位置、発見等級は次の通り (ただし、位置は広瀬さんから寄せられた画像を中野さんが測定した値)。
発見日時 2008年12月15.56日前後 = 12月15日13時30分前後 (世界時) 赤経 2時 43分 20.84秒 赤緯 +4度 58分 19.2秒 (2000年分点) 発見等級 16.9等
広瀬さんの画像を用いた中野さんの測定値によると、この超新星はNGC 1070 銀河の中心から西に21秒角、北に12.5秒角離れた位置にあります。
広瀬さんが、11月20日と12月3日にこの場所を撮影したときの画像 (限界等級はそれぞれ18等と17.5等) には、この天体は写っていませんでした。また、DSS (注) の画像でも、この位置には何も天体は写っていませんでした。
なおこの超新星は、広瀬さんが発見する9.6時間前に、チリ大学の G. Pignata さんらによる CHASE プロジェクトによって発見されていましたが、広瀬さんの発見も独立発見として認められました。
アマチュア天文家の広瀬さんは、昨年12月31日に NGC 2770 銀河の中に17.2等の超新星「2007uy」を発見しており、2007年度の天体発見賞を受賞しています。今回の「2008ie」の発見により、広瀬さんによる超新星の発見数は計5個 (独立発見を含む) となりました。広瀬さんの今後の活躍を期待します。
注:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
2008年12月17日 国立天文台・広報室