物理学の優れた業績をたたえる今年度の仁科記念賞を、自然科学研究機構国立天文台 (台長:観山正見) の家正則 (いえまさのり) 教授が受賞しました。
仁科記念賞は、故仁科芳雄 (にしなよしお) 博士の功績を記念し、物理学とその応用に関し優れた研究業績をあげた研究者に授与されます。
家氏が率いる研究グループは、現在知られている最遠方銀河10個のうち9個をすばる望遠鏡を用いた観測で発見しています。さらに、自ら設計・製作した狭帯域フィルターを用いて、約129億光年かなたにある最遠の銀河を発見するという成果 (国立天文台 アストロ・トピックス (242) 参照) と、すばる望遠鏡の建設やその後の開発研究の寄与が、今回の受賞理由となりました。
ビッグバンで始まった宇宙は、その後の膨張過程においてさまざまな進化をたどっています。家氏は、すばる望遠鏡の研究グループの中心となって、宇宙を構成する主成分である銀河がいつ誕生し、どのように宇宙環境に影響したか、などの研究を進めています。また、すばる望遠鏡の解像力を格段に改善するレーザーガイド補償光学装置の開発を進めながら、米国・カナダとの国際協力で次世代の超大型光赤外線望遠鏡を実現すべく、日本のリーダーとして精力的に取り組んでいます。
今回の受賞について、家氏は、「すばる望遠鏡による初期宇宙の探査研究については、柏川さん、嶋作さん、太田さん、大内さんなど (注)、多くの有能な若手の皆さんとの共同研究の成果ですので、単名での受賞は恐縮至極です。しかし、今回の受賞が、すばる望遠鏡や超大型光赤外線望遠鏡計画を含め、国立天文台の今後に多少なりとも追い風になることを期待いたします」と話してい ます。
この授賞式は、12月5日に東京會舘 (東京都千代田区) にて行われる予定です。
注:研究メンバー
柏川伸成 (かしかわのぶなり) :国立天文台・准教授
嶋作一大 (しまさくかずひろ) :東京大学・准教授
太田一陽 (おおたかずあき) :理化学研究所・基礎科学特別研究員
大内正己 (おおうちまさみ) :カーネギー天文台・カーネギーフェロー
ほか
2008年11月14日 国立天文台・広報室