オリオン座流星群は、毎年10月中旬から下旬に活動する流星群です。ハレー彗星が軌道付近に放出したダスト (砂粒) の流れの中を、この時期に地球が横切るため、ダストが地球大気に飛び込んで流星となります。普段の年は、空の暗いところで観察しても1時間にせいぜい10-20個程度しか出現しない中規模の流星群でしたが、2006年に1時間あたり100個程度、2007年に1時間あたり60個程度と2年連続で流星出現数が増加し、注目されています。
2006年の活発な出現について、国立天文台の佐藤幹哉 (さとうみきや) 広報普及員と渡部潤一 (わたなべじゅんいち) 准教授は、ハレー彗星から放出されたダストの分布をダスト・トレイル理論を用いて計算し、約3000年前に放出された古いダストによるダスト・トレイルが2006年に地球に接近し、起こったものであることを突きとめました。この計算によれば、ダスト・トレイルが地球軌道に接近する傾向は、2010年頃まで継続しており、2007年に流星数が増加したのも、この影響と考えられます。
今年2008年も、この接近傾向の期間中にあたるため、活発な流星の出現が期待されます。しかし、計算上は前の2年よりもダスト・トレイルが地球より離れてしまうため、あまり流星数が増加しない可能性もあり、予想は難しい状況です。
ダスト・トレイルとの接近は、10月19日の昼から夕方と予想され、普段の年の極大 (21日前後) よりも若干早めです。日本では、残念ながら観測できない時間帯ですが、10月19日の夜 (19日深夜から20日明け方) を中心に、前後の日も流星が増える可能性があります。
オリオン座流星群の場合、放射点が昇る22時頃から明け方の5時頃までの間に流星が出現します。今年は、極大を迎える19日頃のこの時間帯には、満月を数日過ぎたばかりの明るい月が空に見えているため、月明かりに邪魔されて暗い流星が見えなくなり、観察できる流星の数はたいへん少なくなってしまいます。また、市街地など明るい空のもとでは、観察される流星の数はさらに少なくなり、1時間あたり数個程度になってしまうかもしれません。
以上のように、今年は必ずしも好条件ではありません。観察には、このような状況を心得たうえでのぞんでいただきたいと思います。もしかすると、約3000年前にハレー彗星から放出されたダストを起源とする流星を、目にすることができるかもしれません。今年もオリオン座流星群にご注目ください。
2008年10月15日 国立天文台・広報室