板垣さん、わし座に新星らしき天体を発見

 山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんが、9月22日 (世界時、以下同じ) の観測から、わし座に約14.0等の新星らしき天体を発見しました。この天体は、口径21センチメートルの反射望遠鏡を用いた観測によって、9月22.5日に発見されたものです。この発見は、九州大学の山岡均 (やまおかひとし)さんを通じて国際天文学連合に報告されました。

 以下は、板垣さんが口径60センチメートルの反射望遠鏡を用いて確認観測したときの観測値です。

日時 2008年9月22.586日 = 9月22日14時04分 (世界時)
赤経 19時 06分 28.58秒
赤緯 +7度 06分 44.3秒 (2000年分点)
等級 14.0等

 板垣さんは、2007年11月2.396日にもこの付近を撮影していましたが、17.0等よりも明るい天体は写っていませんでした。2MASS (注1) カタログでは、この付近に非常に暗い赤外線天体を確認することができます。また、ベラルーシのNevskiさんは、9月22.8日にこの新星を14.0等で観測していることと、DSS (注2)の画像では、この天体が確認できなかったことを報告しています。

 なお、カナダのビクトリア大学によるスペクトル観測によると、その特徴から、この天体が古典的新星 (注3) であることが示唆されています。

 板垣さんは、超新星の発見で大活躍されており、日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録を更新中です。また先日9月10日には、一世紀にわたって行方不明だったジャコビニ彗星 (205P/2008 R6 (Giacobini) ) を再発見するなど、新天体発見の活躍は目覚ましい限りです。しかし、天の川銀河内における新星の発見はこれまでになく、今回の天体が新星だと確認されると、板垣さんにとって初めての発見となります。

注1:2MASS (Two Micron All Sky Survey) は、米国アリゾナ州のホプキンス山天文台と、チリのセロ・トロロ・汎米天文台に設置した口径1.3メートル望遠鏡を用いて、1997年から2001年にかけて全天の近赤外線観測を行ったもの。2003年にカタログとして出版された。

注2:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。

注3:恒星の性質は、分光観測で得られたスペクトル線の振る舞いから知ることができる。新星の場合、そのスペクトル線で水素のバルマー線に強い輝線がみられるものを古典的新星と呼んでいる。

参照:

2008年9月26日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)