福岡県久留米市の西山浩一 (にしやまこういち) さんと、佐賀県みやき町の椛島冨士夫 (かばしまふじお) さんが、4月18日 (世界時、以下同じ) の観測から、いて座に8.4等の新星を発見しました。この新星は、4月18.784日、焦点距離105ミリメートル (f/5.6) カメラレンズを用いたCCD観測により撮影された2枚の画像 (限界等級約12.6等) の中から発見されました。
この発見は中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合に報告されました。
以下は、この天体の発見日時、位置、発見等級です。ただし、位置は、お二人が4月18.809日に口径40センチメートルの反射望遠鏡 (f/9.8) を用いた観測から得た値です。
発見日時 2008年4月18.784日 = 4月18日18時49分 (世界時) 赤経 18時 05分 58.88秒 赤緯 -27度 13分 56.0秒 (2000年分点) 発見等級 8.4等
西山さんと椛島さんは、4月13.765日と14.805日にこの場所を撮影していましたが、そのときの画像 (限界等級はそれぞれ12.2等と12.8等) にはこの天体は写っていませんでした。また、DSS (注1) にもこの天体は写っていませんでした。
この他、チリの W.Liller さんが4月13.3日と16.22日に、オーストラリアのP.Camilleri さんが4月11.593日に、同じ場所を撮影していましたが (限界等級はいずれもおよそ11.0等)、いずれもこの天体は写っていませんでした。
同中央局の未同定天体情報のウェブページにこの発見が掲載された後、米国の S.Dvorak さんは、4月19.36日の観測でこの場所に9.28等の天体が写っていたと報告しています。さらに、イタリアの E.Guido さんらも、4月19.39日にこの天体を8.90等で観測しています。
愛知県豊橋市の長谷田勝美 (はせだかつみ) さんは、4月15.743日にこの天体の近くを撮影した画像には11.5等よりも明るい天体は写っていなかったと、九州大学の山岡均 (やまおかひとし) さんを通じて報告しています。また、岡山県倉敷市の藤井貢 (ふじいみつぐ) さんが、4月19.82日に行った低分散分光観測の結果、そのスペクトル線が最大光度もしくはこれを過ぎてまもない古典的新星 (注2) の特徴を示していると、山岡さんは加えて伝えています。
さらに、西山さんと椛島さんが4月19.725日に行った観測では、この新星は7.9等まで増光していたと、中野さんは伝えています。
西山さんと椛島さんは、4月10日にはくちょう座に新星を発見したばかりです。さらに、今年に入ってからも、すでにM31銀河に3個の新星を発見するなど活躍中です。
注1:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。
注2:恒星の性質は、分光観測で得られたスペクトル線の振る舞いから知ることができる。新星の場合、そのスペクトル線で水素のバルマー線に強い輝線がみられるものを古典的新星と呼んでいる。 >
2008年4月21日 国立天文台・広報室