市村さんと板垣さん、相次いで超新星を発見

 新年早々、日本人による超新星の発見が相次いで報じられました。

 埼玉県比企郡の市村義美 (いちむらよしみ) さんは、1月2日 (世界時、以下同じ) の観測から、さんかく座方向にある NGC 634 銀河の中に17.6等の超新星を発見しました。この超新星は、口径28センチメートルのシュミット・カセグレン式反射望遠鏡 (f/8.1) を用いたCCD観測により撮影された多数の画像(限界等級19.3等) の中から発見されました。

 この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、超新星は「2008A」と命名されました。

 発見日時、位置、等級は次の通り (ただし、位置は市村さんから寄せられた画像から中野さんが測定した値)。

発見日時 2008年 1月 2.54日 = 1月 2日12時58分 (世界時)
赤経 1時 38分 17.38秒
赤緯 +35度 22分 13.7秒 (2000年分点)
発見等級 17.6等

 この超新星は NGC 634 銀河の中心から、西に14.6秒角、北に18.9秒角離れた位置にあります。この場所を市村さんが2007年11月18日に観測した画像にも、また、山形県山形市の板垣公一 (いたがきこういち) さんが2006年8月20日に撮影した画像にも、この天体は写っていませんでした。埼玉県上尾市の門田健一 (かどたけんいち) さんも、DSS () の画像にこの天体が存在してないことを報告しています。

 この超新星は引き続き観測が行われ、板垣さんが1月3.391日に16.7等、神奈川県茅ヶ崎市の広瀬洋治 (ひろせようじ) さんが1月3.401日に16.7等、門田さんが1月3.458日に17.0等、さらに市村さんご自身が1月3.525日に17.5等の観測値を得ています。

 市村さんは、昨年12月にも超新星「2007ss」を発見したばかりですが ( 国立天文台アストロ・トピックス (353) )、今回はそれに続く発見であり、今年になってから世界での超新星発見者第一号となりました。

 また、板垣公一さんは、1月2日の観測から、うしかい座方向にある NGC 5829銀河の中に16.4等の超新星を発見しました。この超新星は、栃木県高根沢町にある口径30センチメートルの反射式望遠鏡 (f/7.8) を用いたCCD観測により撮影された複数枚の画像 (限界等級18.5等) の中から発見されました。

 この発見は、中野主一 (なかのしゅいち) さんを通じて国際天文学連合電報中央局に報告され、超新星は「2008B」と命名されました。

 発見日時、位置、発見等級は次の通り。

発見日時 2008年 1月2.84日 = 1月2日20時10分 (世界時)
赤経 15時 02分 43.65秒
赤緯 +23度 20分 07.8秒 (2000年分点)
発見等級 16.4等

 この超新星は NGC 5829 銀河の中心から、東に23秒角、北に7秒角離れた位置にあります。同じ場所を板垣さんが2007年2月25日に撮影した画像やそれ以前に撮影した画像にも、この天体は写っていませんでした。また、DSS () 画像にもこの超新星は写っていませんでした。

 板垣さんは、昨年7個の超新星を発見しています。また、今回の超新星の発見を含め、板垣さんによる超新星の発見数は通算35個 (独立発見を含む) となりました。日本人アマチュア天文家による超新星発見個数の最多記録をさらに更新中です。

 昨年末から年始にかけて、日本のアマチュア観測者による超新星発見が相次ぎ、その活躍ぶりは賞賛に値します。今後の活躍に期待します。

:DSS (Digitized Sky Survey) は、米国にあるパロマー天文台のサミュエル・オシン・シュミット望遠鏡と、オーストラリアにあるアングロ・オーストラリア天文台の英国シュミット望遠鏡を用いて、全天を撮影し、デジタル化したもの。限界等級の値は天域によって変わるが、平均的には20等級前後の天体まで写っている。

参照:

2008年1月6日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)