今月、およそ2年ぶりに火星が地球に接近します。日本望遠鏡工業会とともに「惑星ぜんぶ見ようよ☆」キャンペーンを展開している国立天文台では、この接近中の火星を望遠鏡でビデオ撮影し、その映像をインターネットを通じてライブ中継することにしました。
火星は、約2年2カ月ごとに地球に接近します。今回最も接近するのは12月19日8時46分 (日本時) で、このときの距離は地球から 0.5893天文単位 (8817万キロメートル) です。これは、2003年8月27日の大接近時の距離と比較すると約1.6倍あり、接近とはいえ少々遠めの距離となります。しかし、12月25日には衝 (しょう:注1) となり、ほぼ一晩中夜空に見える観測好期であることには変わりありません。
そこで、この接近中の火星について、多くのみなさんに望遠鏡で見た様子をお伝えしようと、次の日程でインターネット中継を行うことにしました。
中継日:12月24日 (月) および 12月25日 (火) の2日間 中継時間:19:00より21:00まで (予定:天候などによって若干変更する場合があります) 使用望遠鏡:社会教育用公開望遠鏡 (50センチメートル反射望遠鏡) 中継ページ:http://www.nao.ac.jp/phenomena/20071224/
火星は地球と同じような岩石質の惑星です。火星の岩石や砂は、酸化鉄 (赤さび) を多く含んでいるため、望遠鏡で見ると火星表面が全体的に赤っぽく、黄色からオレンジ色に見えます。また、岩石の成分の違いや地形の影響により、地表には黒っぽい模様が見られます。さらに火星の季節によって、北極や南極には、氷やドライアイス (二酸化炭素が氷ったもの) でできた白い極冠 (きょくかん) という模様も見られます。
残念ながら現在は、冬の季節風や、上空のジェット気流といった地球上の大気の激しい流れを通して火星を見ることになるため、望遠鏡で拡大したときには、まるで川底の石を見ているように火星面がゆらいでしまうことが多いです。このため、中継でこれらの細かい模様がどこまで見えるかは、当日にならないとわかりません。しかし、望遠鏡で覗いた生の火星の姿に近い映像を、みなさまにご覧いただこうと思っています。また中継時には、生解説を何度か交えながら、映像をお送りする予定にしております。詳しいスケジュールは、中継のページをご参照ください。
当日の空では、12月24日に満月となる月が火星のそばに位置しています。中継では月面の様子も合わせてご覧いただく予定にしております。合わせてお楽しみください。
なお、火星は望遠鏡を使わなくても、約マイナス1.6等という明るさで夜空に輝いています。肉眼でもその存在を簡単に確認できますので、中継映像だけではなく、実際の夜空で火星をぜひさがしてみてください。そして「惑星ぜんぶ見ようよ☆」キャンペーンにもぜひご参加ください。
注1:太陽−地球−惑星がほぼ一直線に並ぶこと。地球から見て惑星が太陽の反対側となるため、ほぼ一晩中観察できる。
2007年12月18日 国立天文台・広報室