すばる望遠鏡、ホット・ジュピターへ進化しつつある系外惑星を発見

 東京工業大学、神戸大学、東海大学、国立天文台、米国サンフランシスコ州立大学などからなる研究グループは、すばる望遠鏡とケック望遠鏡を用いた共同観測により、カシオペヤ座の HD 17156 という恒星の周りに木星の3倍の質量をもつ惑星を発見しました。これは、すばる望遠鏡で発見した2つ目の太陽系外惑星です (国立天文台 アストロ・トピックス (112) 参照)。

 この惑星の特徴は、中心の星に近い割にその軌道が円ではなく、大きくゆがんだ楕円であることです。そのため、いわゆるホット・ジュピター (公転周期が短い大型の系外惑星) に進化しつつある惑星ではないかと考えられます。

 今回見つかった惑星は、中心の恒星の周りを周期約21日で公転しています。通常、こういった中心星に近い場合は円軌道のものが多いのですが、この惑星は非常にゆがんだ楕円軌道となっています。このため、最も中心星に近づく場合は約0.05天文単位にまで近づき、最も遠い場合には約0.25天文単位にまで遠ざかります。これほど中心星に接近する惑星においては、中心星からの潮汐力を受けて軌道が変化します。最も中心星に近づく点 (近星点) までの距離を保存したまま公転軌道が次第に円軌道になっていくと考えられています。つまり、この惑星は、いずれは半径が0.05天文単位の円軌道を描くホット・ジュピターに進化していくのではないかと考えられるのです。

 ホット・ジュピターや楕円軌道惑星はこれまでにたくさん見つかっていますが、これらの形成過程はまだはっきりとは解明されていません。今回発見された惑星は、楕円軌道の惑星がホット・ジュピターへ進化するというひとつのシナリオを例示している、貴重なものと言えるでしょう。

 本研究グループは、2004年から、約2000個の恒星を対象としたホット・ジュピター探索を行っています。今後もこの中から新たな系外惑星が多数見つかるものと期待されます。

 この研究成果は、9月26日より岐阜大学で行われる日本天文学会秋季年会で発表される予定です。また、11月10日発行のアストロフィジカル・ジャーナル誌に掲載される予定です。

※この記事は、東京工業大学の佐藤文衛さんよりご提供いただきました。

参照:

2007年8月17日           国立天文台・広報室

転載:ふくはらなおひと(福原直人)