国立天文台、神戸大、東工大、サンフランシスコ州立大などの研究者からなる日米合同観測チームは、国際的観測計画(N2Kプロジェクト(注))の一環として、すばる望遠鏡やケック望遠鏡などによる観測を行ない、ヘルクレス座にある太陽型の恒星(HD149026)のまわりを2.87日で公転する系外惑星を発見しました。その後の観測によって、この惑星はいままでに誰も予想していなかった、地球質量の70倍くらいの巨大な固体(岩石と氷)のコアを持つ、驚愕すべき惑星であることが判明しました。
現在までに150個を越える系外惑星が発見されていますが、一般にそれらの惑星の内部構造を知ることは困難です。しかし、惑星が地球からみて恒星面を通過するような軌道を持っている場合、その通過の様子を観測すると、惑星の直径や密度、大気の組成や中心核であるコアの質量などが推定できます。
新たに見つかった惑星は、幸運にも、そのような位置関係にあったため、アメリカのアリゾナ州にあるフェアボーン天文台で恒星面を通過する減光が観測されました。その結果、この惑星は土星より重いのにもかかわらず、その直径は土星よりひとまわり小さいことがわかりました。つまり密度が高いのです。計算によれば、この密度を実現するには、惑星がガスだけで出来ているのではなく、地球質量の70倍くらいの巨大な固体(岩石と氷)のコアを持つ必要があります。このような惑星はいままで発見されたことがありません。
「理論家にとって、この惑星の発見は最初に発見された系外惑星であるペガスス座51番星以来の重要なものだ。コア質量は理論的には地球質量の30倍が限界とされていて、木星、土星ではもっと小さい」と、井田茂(いだしげる)・東工大助教授は述べています。また、この惑星の発見により、木星や土星のようなガス惑星の形成理論が明らかになって行くとも期待されています。
今回のすばる望遠鏡での観測チーム・リーダーである佐藤文衛(さとうぶんえい)・国立天文台研究員は、「型破りの系外惑星にはなれてきていたが、それにしてもこんな惑星は想定外だった。我々はこのN2Kプロジェクトでもっともっとすごい発見をしていくだろう。そのことによって常識が覆されながら、どうやって惑星系ができるのか、どんな多様な惑星系があるのか、太陽系は一般なのか特殊なのか、というようなことが明らかになっていくと思う」と、その意気込みを語っています。
この研究成果は、アメリカ航空宇宙局(NASA)と国立天文台との共同で発表され、論文は米国天文学会誌 "Astrophysical Journal" に掲載される予定です。
2005年7月1日 国立天文台・広報普及室