アメリカ航空宇宙局(NASA)が打ち上げたハッブル宇宙望遠鏡によって、昨年5月に発見された、冥王星の新衛星候補天体2つに名称がつけられました。
これまで2つの新衛星候補天体には、外側を周る方にS/2005 P1、内側を周る方にS/2005 P2と仮符号がつけられていました。これら2つの新衛星候補天体が、実際に冥王星の周りを回っているかを同定するため、ハッブル宇宙望遠鏡をふたたび冥王星にむけて観測が続けられていましたが、アメリカのサウスウエスト研究所、ジョーンズ・ホプキンス大学などの研究者チームを中心とする発表によると、このたび国際天文学連合(IAU)の承認を得て、正式に新衛星と認められ、S/2005 P1は「Hydra」、S/2005 P2は「Nix」と命名されました。
両衛星の明るさは、冥王星本体の明るさの5千分の一程度です。また距離も1978年に発見された衛星、カロン(Charon)と本体との距離の2-3倍の位置にあります。神話によれば、Nixは“夜の女神”、Hydraは“九つの頭をもつ大蛇”、を意味し、どちらも神話に登場する冥界に関係しています。
因みに、太陽系の果てにある第9惑星の冥王星は、アメリカの天文学者トンボーによって発見されたのが1930年で、まだ発見後76年しか経過していません。冥王星の公転周期が約250年ですから、太陽の周りの軌道上を全長の3割動いただけです。冥王星は質量が小さいことなどから、その振る舞いや運動に、天文学的に大きな関心が寄せられている天体です。
冥王星の衛星は、1978年にカロンが発見されて以来、合計3個となり、すべての衛星に名前がついたことになります。
2006年6月30日 国立天文台・広報室